公正証書という代替手段提案にも「愛の証明にお金がかかるのはありえない」
さらに番組では、こうした同性カップルの「不便さ」を解消するための方策として公正証書による契約という手段を紹介したのだが、異性カップルが婚姻届を出すのは当然無料だが、公正証書を作るのにはお金がかかる。りゅうちぇるはこう疑問を呈した。
「こういう取り組みを紹介するということは、やさしさだなと思うんですけど。お金がかかっちゃうのかって。(ツメ)やっぱり、愛を証明するためにお金がかかるっていうのは、ふつうじゃあり得ない話」
同性婚を認めるか認めないかは、単に便利・不便の問題ではない。同性愛の人が、異性愛の人と同等の権利を手にするために、特別なお金を払ったり特別な手続きを取らなければならないこと。すべての人に等しく与えられるべき権利を得るために、ある属性のためにその権利を得られないということ。これは差別と平等の問題だ。そのことをりゅうちぇるは喝破したうえで、すべての愛が認められるべきと主張しているのだ。
しかし右傾化の顕著な昨今の日本社会では、りゅうちぇるが言うような「すべての愛が美しい」とは真逆の価値観が根強い。
〈彼ら彼女らは子供を作らない、つまり「生産性」がないのです〉(「新潮45」18年8月号/新潮社)などという「優生思想」にもつながる差別発言をした自民党の杉田水脈衆議院議員がその後、自身の言葉を撤回することなく、そして、自民党内から処分を受けることすらもなく、現在でもなんら変わりなく国会議員を続けていられている事実が、それを端的に表している。
『news zero』では、視聴者から寄せられた同性婚に対する反対意見も紹介された。「日本の伝統的な家族観が失われる」「少子化につながる」といったものが主な反対意見だが、それに対してりゅうちぇるは、自身の体験を交えながら語った。
りゅうちぇるはテレビに出るようになった当初は、当時恋人だったぺことの関係について「あの人たちは本当は付き合ってないんじゃないの?」「ビジネスカップルじゃないの?」と言われてきたと振り返る。
2人が結婚して子どもをもうけてからはそういった声もなくなってきたが、しかし、今度は「あの2人に子育てできるの?」やら「パパになるなら金髪を黒髪にしなきゃね」といった「パパだから○○すべき」「夫婦だったら××すべき」というコメントが多く寄せられるようになったという。
世間からそういった反応が起きる原因についてりゅうちぇるは「それまでこういう2人がいなかったから、見たことなかったから、なにかこう人を枠にはめたい、決めつけてしまいたいっていうのがあると思う」と分析している。