LGBT差別、沖縄基地問題、朝鮮学校無償化問題までをお笑い番組で取り上げた村本
性的マイノリティをめぐる差別、基地問題で沖縄の民意を無視する政府、安田純平氏に自己責任を叫ぶ一方で目が向けられないシリア情勢、BTSの原爆Tシャツ問題を槍玉に挙げながら被爆者を蔑ろにする政府や極右たち、朝鮮学校の授業料無償化が不当に認められない現状、水道民営化法案をゴリ押す安倍政権と無関心な国民──。時間にして約2分間、「弱者の声を聴け」という村本の叫びが炸裂したのである。
この「ド正論」は、普段、日本の報道・情報番組が無視したり、政権からの圧力に晒されることを恐れ、追及することを放棄している問題ばかりだ。なかでも朝鮮学校無償化問題はネトウヨたちからもっとも攻撃のターゲットにされる話題。こうした問題を、ゴールデンタイムのお笑い番組で「漫才」として、村本は視聴者に剛速球で放り込んだのだ。
この真っ向勝負に、ネット上では〈芸能人がテレビで突っ込まない日本の異常なところかなり突っ込んでてすごく感動した…圧力に負けないその根性、心からリスペクトです…〉〈しょうもないことで笑うのもいいけど、村本さんがやっている漫才は日本中の芸人集めても彼にしかできない〉などと称賛の声があがった。さらに、玉城デニー・沖縄県知事も〈磨いて、晒して、発した語力。中身も、表現も、プロの実力〉と賛辞を送った。
実際、今回の漫才がすごかったのは、テレビが報じない・追及しない問題をネタとして取り込んだというだけではない。特筆すべきは、漫才全体が強者の権益保護と弱者排除をどんどん強めているいまの日本社会と新自由主義的価値観への批評になっており、しかも、それがお笑いとして成立していたということだ。