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Wikiコピペ疑惑の百田尚樹『日本国紀』を真面目に検証してみた! 本質は安倍改憲を後押しするプロパガンダ本だ

関東大震災の朝鮮人虐殺と南京虐殺もおきまりのロジックで否定

 また百田センセイは、日中戦争(支那事変)についても〈ただ、日本が戦闘を行ったのは、そもそもは自国民に対する暴挙への対抗のためであって、中華民国を侵略する意図はなかった。「暴支膺懲」というスローガンが示すように「暴れる支那を懲らしめる(膺懲)」という形で行った戦闘がいつのまにか全面戦争に発展したというのが実情である〉などと書いている。さも「自国民を守るために仕方がなかった」「挑発したのは中国側」と言わんばかりだが、そもそも日本の大陸侵略の意図がなければありえない話であって、ペテンとしか言いようがない。

 関東大震災での朝鮮人虐殺や南京事件(南京虐殺、あるいは南京大虐殺)などについては、「人数」をクローズアップし、「(大)虐殺ではない」と結論づけて矮小化を図るという、歴史修正主義定番のレトリックも健在だ。

 ちなみに、百田センセイは朝鮮人虐殺について、当時の司法省報告にある殺害された朝鮮人の人数「233人」(実際には起訴された事件の犠牲者数に過ぎないのだが)をあげつらい、〈流言飛語やデマが原因で日本人自警団が多数の朝鮮人を虐殺したといわれているが、この話には虚偽が含まれている〉などとして、決して「虐殺」の事実を認めない。

 ところが、日中戦争初期の通州事件については〈この事件は、「冀東防共自治政府」〔中略〕の中国人部隊が、通州にある日本人居留地を襲い、女性や子供、乳児を含む民間人二百三十三人を虐殺した残酷な事件である〉と説明し、明確に「虐殺」と評価する。なお、通州事件は、日本の戦争犯罪を相対化するために極右界隈がよく持ち出す話だが、『日本国紀』で百田センセイのいう「民間人233人」の具体的根拠を、筆者は寡聞にして知らない。なお、天津日本総領事館北平警察署通州分署「在通州居留民(内地人)名簿」および「在通州居留民(朝鮮人)名簿」では日本人114人、朝鮮人111人の合わせて225人(日本人将校、特務機関員、警察関係者は含まず)である(広中一成『通州事件』講談社)。もちろん犠牲者数がすべてではないが、念のためインターネットで検索すると「233人」とするネット右翼系のブログがヒットした。いや、本当に根拠がわからないので是非、百田センセイに教えてほしい。

 いずれにしても、百田センセイは〈大東亜戦争は決していわゆる「侵略戦争」ではなかった〉などと言い張り、日本の戦争犯罪を矮小化・正当化しようとするのである。しかし、言うまでもなく、こうした記述はほとんどの歴史教科書には見られない。だからこそ、百田センセイは歴史教科書にどうして書かれていないかを説明する必要に迫られる。

 それこそが、【転】にあたる「東京裁判史観批判およびWGIP洗脳」である。この敗戦から戦後にかけての叙述こそ、『日本国紀』のクライマックスと言ってよいだろう。

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