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室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第12回ゲスト 原田眞人(前編)

『検察側の罪人』原田眞人監督が室井佑月に作品に政権批判を盛り込んだ理由を激白「あのくだり、脚本には書いてなかった」

原田監督「歴代総理たちの誰一人として、今の安倍さんがやっているようなことはやっていない」

原田 リスクを冒す企画がなくなった話もそうだけど、組織の中でリスクを冒す人たちのパーセンテージがどんどん減っているなという感じはします。特に政権に対してね。どう考えても、安倍政権がまともとは思えないのに。

室井 メディアの問題は大きいと思います。強行採決を連発したり、お友だちを優遇したり、嘘をついたり、逆ギレしたりする安倍さんに忖度してばかりだし、だから簡単に言論圧力に屈しちゃう。

原田 あれだけ恥ずかしいことをやっているのにね。そして不思議なことに国民の支持がある程度あり、それを背景に憲法改正をしようとしていることも大きな問題です。憲法に関して安倍さんは「アメリカのお仕着せだから」というロジックを使っていますが、でも調べると全然そうではない。当時、明治憲法をそのままなぞっただけの憲法を作ってGHQに持っていったら激怒されたというのは当たり前。そのときに憲法研究会があって、高野岩三郎さんが鈴木安蔵という当時のリベラリストの憲法学者を入れたりして。現在の憲法のベースとして日本の憲法研究会の草案があったんです。

室井 監督、映画だけじゃなく、いろんなことに詳しいんですね。すごい物知り! そういえば映画のパンフレットで木村さんも「監督に膨大な量の知識があって」と褒めてたのを思い出しました。本当にそうですね。しかもこの対談の趣旨をすごく理解してくれていて。「アベを倒したい!」ですからね(と、念を押す)。

原田 今後の構想として「憲法を作るプロセス」の作品を考えていて、いろいろな方面のリサーチをしている。それで室井さんとの対談だから、憲法などの話も出るかと思ってもう一回頭の中に入れてきた(笑)。

室井 ありがとうございます! で、安倍さんは薄っぺらなんだと思います。昔の政治家はもっとワルもいたかもしれないけど、もっと厚みや情があったと思うんです。しかも多様な意見や考え方があって、それが力にもなっていた。

原田 自民党が歴代輩出してきた総理たちの誰一人として、今の安倍さんがやっているようなことはやっていないですよね。もちろん個人的に許せない首相経験者は何人かいるけど、しかし劣化の度合いが激しい。僕ら映画監督も劣化しているとは思うけど、政治家の劣化の度合いはその比じゃないですよ。僕は野中広務さんみたいな政治家が好きだったけど、野中さんのようなご意見番、筋を通す人が、今、保守系の中にいないじゃないですか。そういうのは怖いなと思う。僕らが一番恐れているのは、表現の自由を圧迫されることで、メディアコントロールがまず最初に始まるわけです。

室井 確かに、もう始まってますし、どんどん進んでます。
(後編はこちら)

最終更新:2018.10.04 10:14

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