佐藤建も古市憲寿の「若者の七割が今の生活に満足している」に反論
佐藤は2012年、古市憲寿の著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)の対談に登場。そのなかで、古市がまさに「国民生活に関する世論調査」をもちだして「今の二〇代の生活満足度はだいたい七割くらい。一見、不幸な時代なのに若者の七割が『生活に満足している』と答えている。(中略)この数字をどう思いますか?」と聞くと、佐藤はこのように語ったのだ。
「今の若者は『満足してる』って答えちゃうと思うんですよ。でも満足してるって言っている中で、ああだこうだ不満を毎日言ってると思うんです」
「僕も欲しいものとか色々あるけど、満足してるかって聞かれたら満足してるって答えちゃう」
「あとその『満足してます』って人たちは、周りがみんな同じくらいなところにいるのかなとも思います。もしかしてすごく近くに、明らかに自分より幸福だったりとか、そういう人がいたら満足してないって答えるのかもしれないですね」
いみじくも佐藤が指摘している通りなのだろう。現在の政治や社会状況に不安や不満をもっていても、漠然と〈全体として、現在の生活にどの程度満足していますか〉と問われ、そこに「まあ、満足している」なるふんわりとした選択肢を見つければ、人はなんとなくそれを選んでしまいがちだ。
内閣府がそうした結果を見込んで、意図的に個別面接聴取法を採用しているどうかはわからないが、いずれにしても、内閣府の「国民生活に関する世論調査」における「現在の生活『満足』74.7%」という数字は明らかにまやかしが含まれており、これをもとに「日本国民の4分の3は満足している!」と主張してもなんの意味もないことは明らかだろう。
ところが、マスコミは冒頭で紹介したように、この内閣府調査をやたら喧伝するのだ。いや、メディアだけではない。ほかでもない安倍首相もしばしばこの調査結果をもちだしている。
たとえば2017年1月25日の参院本会議では、共産党の小池晃議員が、OECDも使用する厚労省の「国民生活基礎調査」を取り上げ、「この20年間、生活が苦しいと答えた人が42%から60%となる一方で、普通と答えた人が52%から36%になりました。普通に暮らしていた人々が苦しい生活に追い込まれています。今や、リストラ、病気、介護などで、誰もが貧困に陥ってしまう社会になってしまいました。こうした社会の立て直しが政治の最大の責任なのではありませんか」と質した。
すると、これに対して安倍首相は「昨年8月に公表された内閣府の国民生活に関する世論調査によれば、満足と回答した割合は1995年以来の70%を超える水準を2013年以降、つまり政権交代して以降、4年連続で維持しております」と答弁。自分にとって都合が良い「国民生活に関する世論調査」のデータにすりかえて、ごまかしたのだ。
少なくとも、政権に都合のよいデータが示されたときには、それとは別の調査も考慮するというリテラシーが必要だろう。
(小杉みすず)
最終更新:2018.09.04 12:09