プッシー・ライオット公式HPより
7月15日に行われた2018FIFAワールドカップロシア大会の決勝戦(フランス対クロアチア)。結果は、4対2でフランスが1998年大会以来20年ぶりの優勝に輝き、クロアチアは悲願の初優勝を遂げることはできなかった。
そんな決勝戦で話題となったのが、後半6分に警察官の衣装を着た人物がピッチに乱入してきた騒動だ。これは「お騒がせな騒動」として一笑に付していいものではない。ただのイタズラ目的で行われたものではないからだ。
騒動の直後、ロシアのパンクバンドであるプッシー・ライオットのメンバーがSNSを通じて声明を発表。この行動の意味を説明したうえで、政治犯の解放、国内における自由な政治競争の容認、不当逮捕の停止などを要求した。
プッシー・ライオットのメンバーは、2012年にモスクワの救世主キリスト大聖堂でゲリラ演奏を敢行し、プーチン批判が歌われた楽曲を歌唱。暴徒行為の疑いで逮捕されている。プッシー・ライオットはこれまでもこういった行動を起こし、各国メディアの注目を浴び続けてきた。その背景にあるのは、ウラジーミル・プーチン政権下で行われている強権的な政治と批判者への弾圧だ。
ロシア国内では、プーチン批判者が殺害されるなどの事件が頻発しており、国際的な問題となっている。
それ以外にも、同性愛宣言禁止法やシリア介入など、ロシアの人権問題は国際的な非難の的となっている。2014年のソチ冬季オリンピックでは、ロシアへの抗議の意を込めてアメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど欧米諸国の首脳が軒並み開会式への参加を見送った。なお、日本の安倍首相はそういった状況下でも開会式に出席し、プーチンに媚を売った。
今回のワールドカップでは、西側諸国からロシアへの抗議の動きは鈍かったが、それでも背景に問題を理解している西側諸国では今回の乱入を報じる際、プッシー・ライオットの主張をきちんと紹介し理解を示すスタンスの報道がなされている。しかし、日本ではまったく逆の状況が起きている。
SNS を中心に「W杯決勝をぶちこわした」「サッカーに政治をもち込むな」というプッシー・ライオットへの批判があふれかえったのだ。
いや、SNS だけではない。ニュースサイト版の毎日新聞は「ロシアW杯 決勝に水を差す愚行 男女4人が乱入」と題された記事を配信。記事内でプッシー・ライオットの名前や、乱入を通して伝えようとした主張に関する解説は一切なく、〈フランス、クロアチアともに激しい攻防を繰り広げていた最中で、熱戦に水を差す愚行だった〉と書かれていた。この記事は多くの読者から批判を受け、毎日新聞は記事と、該当記事を告知するツイートなどを削除している。
たしかに、プッシー・ライオットの乱入がW杯の決勝に水を差したことは間違いない。