JASRAC会長は「音楽教室の生徒の大半は大人」とトンデモ発言
こういった姿勢は、JASRAC会長で作詞家のいではく氏も同じである。彼は「週刊文春」(文藝春秋)17年7月20日号の取材に応じているのだが、音楽教室の問題について記者から「音楽文化の根っこを弱らせると批判されている」と質問されると、このように答えたのだった。
「音楽文化の振興を、JASRACの徴収が阻害するみたいな考え方はおかしいでしょうって! 逆に言えばね、教室の方が積極的にそういうこと(著作権)を教えてクリエイターを増やし、日本のいい楽曲をたくさん生んでいくことが、やっぱり音楽文化の振興に必要なんじゃないかと思いますけどね」
普通の感覚でこれを読むと詭弁としか思えないが、本番はここからだ。音楽教室から料金を徴収することは、音楽教育を阻害する行為であり、それは将来的な音楽文化の衰退を招くものではないかといった指摘をされるとこのように語ったのである。
「私どもは、決して子どもさんからお金をいただこうと思っているわけじゃなくて、あくまでも営利目的の事業にペイメントをお願いしているんです。現に楽器教室なんかも全部子どもさんで成り立っているわけじゃなくて、子どもさんはほんの一部。大半は大人であったりしているわけです」
確かに、音楽教室に大人がいないとは言わないが、「大半は大人」という説明にはどう考えても違和感しかない。しかも、仮に生徒が「大人」だったとしても、大人たちが楽器を習うことは、音楽文化の裾野を広げていくことに大きく寄与するはずだ。つまり、JASRAC会長の頭のなかはいかに金をふんだくるかだけで、音楽文化の普及などという観点はまったくないのである。
彼らが本当に音楽文化の普及を考えているのであれば、批判に対してもう少し耳を傾ける姿勢があってしかるべきだろう。そういう姿勢なら、そもそも「カスラック」などという声は出ないだろうに、理事長にしろ会長にしろ揃いも揃ってなぜ批判を受けているのか理解しようとせず、むしろ批判に対して挑発的な態度に出るところに、どうしてもJASRACという組織の前時代性を感じてしまわざるを得ない。
しかし、そもそも、なぜ最近になってJASRACまわりで問題が立て続けに起きているのか? 「ミュージック・マガジン」17年4月号では、JASRACをめぐる最近の現象について、〈JASRACが徴収対象を広げてきた背景には、CDのセールスの落ち込みにより、レコード業界からの著作権収入が減少したことがあるとされる〉と説明されている。
実際その通りだろう。しかし、そうであるならば、他から金をふんだくる前にやることがあるだろう。9月6日放送『バラいろダンディ』(TOKYO MX)にてRHYMESTERの宇多丸は、代々木上原にあるJASRACの本部ビルおよび古賀政男音楽博物館の名を挙げてこのように皮肉っていた。
「CDによる著作権の売上が下がって取りどころを新たに開拓しようとしているのかなと思うと、あの立派な古賀政男記念館をちょっと整理するとか、ね」
JASRACの説明を聞く限り、今回問題となっている映画の上映権使用料の値上げについては、まだ映画業界側と話し合う意向を一応見せている。日本の映画文化を破壊することのないよう、うまい着地点を見つけ出してくれることを切に願う。
(編集部)
最終更新:2017.11.10 12:41