新聞各紙から、東京五輪批判が消えた理由
さらに新聞各紙がこの五輪裏金問題に踏み込まない理由がもうひとつある。それが大手主要新聞社である読売、朝日、毎日、日経の4社が東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルパートナーになっていることだ。しかも「一業種一社」を原則とするスポンサー契約だが、今回は国際オリンピック委員会と協議し、複数の新聞社の契約を“特例”として認めてもらったという経緯、恩義もある。本来、新聞各社はオリンピックの問題点や不祥事を批判・検証するべき立場にあるはずだが、検証どころか自ら尻尾をふって五輪利権共同体の一部と化してしまっているのだ。
実際、大手新聞各社がスポンサー契約に動きはじめた2015年の時点で、それまで新国立競技場問題など不祥事報道を行ってきた新聞各紙の報道は明らかにトーンダウン、正式契約した2016年1月以降、その傾向はさらに強まっている。おそらく今後も、五輪への礼賛、ヨイショ記事が氾濫、“東京五輪バンザイ報道”が大々的に展開されていくだろう。
そう考えると、五輪開催にとっても都合の悪い今回のブラジル検察当局の“裏金認定”が大々的に報じられる可能性は限りなく低い。
今回の裏金問題に加え、莫大な額に膨れ上がった開催関連費用、そして五輪施設工事での過労死など様々な問題が噴出するなか、「オリンピックのため」という大義名分のもと、五輪大本営報道”が横行、すべての問題が覆い隠されようとしているのだ。
椎名林檎が「国内全メディア、全企業が、今の日本のために仲良く取り組んでくださることを切に祈っています」と言い放ったように、“五輪に協力しなければ国賊”などという空気がすでに蔓延しはじめてもいる。
このまま日本は五輪ファッショに覆い尽くされていくのだろうか。開催まで3年を切ったが、こんな問題だらけの五輪には反対の声をあげ続けなければならない。
(伊勢崎馨,)
最終更新:2017.09.21 10:35