東山紀之が訴える戦争の記憶をテレビで伝えることの重要性
ネトウヨに媚び、差別を助長するような番組ばかりが横行しているなかで、こうしたまっとうな人権感覚と弱者への思いをもつ東山のような人物が情報番組のキャスターに就任することは、大きな意味がある。
しかも、東山はこの『サンデーLIVE!!』になかでもうひとつ、他の番組がさわろうとしない重要なテーマに踏み込んでくれるかもしれない。それは「戦争の記憶」だ。「AERA」インタビューで現在のメディアにおける戦争の扱い方に関してこう問題点を指摘している。
「いま、戦争を知る人がどんどん少なくなっている。テレビはその記憶を伝えるのに有効ではないか。僕が子どものころは戦争を体験した大人たちが大勢いて、水爆実験やベトナム戦争が起こると、「ゴジラ」「ウルトラセブン」といった子ども向け番組にもその「影」が織り込まれた。漠然とではあったけれど、子どもにもそのメッセージは伝わってきました。過去を知りつつ未来をつくっていく。それが一番大事なことだと思うんです」
本稿冒頭で記した通り、現在の報道をめぐる状況は、逼迫している。政権に対して批判的なことや戦争に反対するような論調を少しでも口にしただけで、安倍応援団やネトウヨから組織的な攻撃を受け、番組を降板させられたり、あるいは番組終了に追い込まれることもありうる。最近も、宇野常寛氏がアパホテルを始めとした歴史修正主義者の批判を行ったことが原因で『スッキリ!!』(日本テレビ)を9月いっぱいで降板することになった。
しかし、東山はそんな昨今の状況に萎縮する気などないようだ。やはり「AERA」のインタビューでこのように語っている。
「ネットで炎上したり、匿名で批判されたりしても気にしません。もともと、のんきなタチなので。番組が始まるのは、ちょうど51歳になったタイミング。少し前なら、初老のオジサンといわれる年齢です。いまさら怖いものもない。何事も「ま、いいか」の精神でやっていこうかと。「中立」の立場を求められてはいるけれど、そもそも「このニュースを伝えよう」と選択した段階で「中立」といえるのか。純粋な中立はないのではないかと僕は思っています」
東山には、人権意識や弱者へ配慮といった優しさだけではなく、圧力に屈しない強さもある。権力の圧力やグロテスクな差別に屈しないニュース番組を届けてくれることを是非期待したい。
(編集部)
最終更新:2017.09.17 01:03