国際的に批判を浴びているナチスの医学を高須院長は評価
世界医師会はナチスの人体実験の反省から、1964年にヘルシンキ宣言(人間を対象とする医学研究の倫理的原則)を採択。そして、2010年になってようやく、ドイツ精神医学精神療法神経学会(DGPPN)は、T4作戦に医師が加担したことを正式に謝罪。2012年5月に開かれたドイツ医師会大会でも、このような声明が発表された。
「私たちは、ナチ時代の医学の犯罪行為に対して医者が重大な共同責任を負うことを認める」
「被害者およびそのご子孫のことを思い起こし、許しを乞う」(「日本の科学者」 本の泉社/2013年5月号より)
また、2010年当時のDGPPN会長だったアーヘン工科大学のフランク・シュナイダー教授は、2015年に大阪で講演した際、こう語っている。
「強制断種や殺人に精神科医が積極的に関与していたことを知ると、恥と怒りと悲しみでいっぱいになる。謝罪に70年を要したことを悔やむ」
医師たちが過去のナチス犯罪に加担したことを認めた上で深い反省の念を公表し謝罪をおこなうのは、戦争を繰り返さないという強い決意だけでなく、進歩する医学における倫理的問題にもかかわるからだろう。事実、現在の日本では、長谷川豊氏の炎上騒動などが顕著なように優生思想が憚られることなく語られ、相模原では残忍なヘイトクライムが起こされてしまった。
だからこそ、医師たちには戦争を振り返り、その事実と向き合う姿勢がつねに求められるのだ。それはドイツの医師だけではなく、731部隊による人体実験に加担したという負の歴史を抱える日本の医師も同様である。
しかし、どうだろう。高須院長はあろうことかナチスの医学を称賛し、アウシュビッツや日本軍の戦争犯罪も否定する。医師に必要な倫理が、まったくもって欠如していると言わざるを得ない。高須クリニックのHPによると、高須院長は日本医師会の会員であるだけでなく、日本美容外科医師会事務局長、アメリカ美容外科学会会員やアジア美容外科学会の顧問などの資格をもち、昭和大学医学部形成外科学では客員教授も務めている。このようなれっきとした医師がナチス医学を褒め称えている事実は、決して見過ごせる問題ではない。海外がすぐさま反応したのは、当然なのだ。