憲法にも反する、人びとの内心までをも捜査対象にする恐ろしさ。もうひとつ恐ろしいのは、「一旦、強制権力が使われてしまうと、正しい扱いを受けられるようになるまでには相当な時間がかかってしまう」「正当な扱いに回復するまでには相当な時間と労力がかかる」(髙山教授)ということだろう。
このように、参考人質疑では「五輪のためだ」「テロ対策だ」という安倍政権による説明がいかに嘘ばかりであり、一般市民がターゲットとなる危険な法案であることが専門家によって暴かれた。そして、共謀罪を考える上で基本的かつ重要な問題を指し示したのが、小林よしのりの意見だった。
小林といえば、オウム真理教のVXガスによる暗殺計画のターゲットにされた経験をもつが、小林は「共謀罪はいらない」という。その理由は、こうだ。
「ワシはものを言う市民です。ほとんどの人はもの言わぬ市民です。だから普段、自分たちはまさかね、切羽詰まった状況に追いやられてね、何かやらなきゃいけないようなぐらいの感覚になるとは誰も思ってませんよ。ほとんどの人間はたとえ監視されていたって自分たちが安全なほうがいいと思っているでしょう。
けれどもね、もの言わぬ市民はね、あるときもの言う市民に変わってしまうときがあるんです。子どもが被害に遭うとかね、いろんな切羽詰まった状況になれば、ものを言わざるを得なくなるんですよ。そういうもの言う市民をどう守るかっていうのはね、これは民主主義の要諦ですよ。これがなかったら民主主義は成立しませんよ」
「共謀罪の非常に危険なところっていうのは、もの言う市民が萎縮してしまって民主主義が健全に成り立たなくなるんじゃないかっていうことなわけです」
「権力と闘う、もの言う市民を守ること自体が民主主義」。小林の歴史修正主義的主張については本サイトは批判的だが、共謀罪は民主主義を殺すものだという意見は、まさしくその通りだろう。そして、安倍政権が共謀罪にこだわる理由は、まさに「もの言う市民を逮捕すること」「もの言わぬ市民を萎縮させること」にあるのだ。
参考人質疑によって露呈した、安倍政権の欺瞞と狂気。安倍政権は共謀罪をゴールデンウィーク明けに衆院を通過させるつもりだというが、こんな国民を欺く嘘っぱち法案を押し通させるようなことがあっては、絶対にいけない。
(編集部)
最終更新:2017.12.01 02:05