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“第二の又吉”との呼び声も高い紗倉まな、最新小説の中身とは? 中3のとき不倫で家を出た父、家族を失った苦しみ…

『凹凸』は、紗倉自身を投影していると思われる24歳のフリーター・栞を中心に、その母・絹子の物語も挟みつつ、母娘がそれぞれ父と別離することになった過程(栞の父・正幸は不倫で家から出て行き、絹子の父・辰夫は自殺する)、そして、そのことを受け入れ、乗り越えていく過程を描いていく。

 では、なぜそのストーリーが、彼女の心の傷と関わりがあるのか?

 図らずも彼女がAV女優になるきっかけをつくることになった紗倉の父だが、実は、彼女が中学3年生のとき、不倫の果てに家から出て行っている。エッセイ集『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』(宝島社)のなかで、〈父とは離婚して以来会っていないので、私がAV女優になったことを知っているのかどうかも不明なままです〉と綴っているが(後のインタビューでは、いまでは連絡は取っており、誕生日にプレゼントが届いたりすると語っている)、『凹凸』は父娘の別離の瞬間を切り取ったこんなモノローグから始まる。

〈あなたから、かぎ慣れない匂いがした。
 それは得体のしれない女のもので、いつしか突き放される日が来るのだという気配を感じ、そして十四歳の夏の夜、わたしはついに“失恋”した。
(中略)
「ごめん」と大きな背中が揺れ、あなたの唇が情けなく震えて謝罪の言葉があふれ出し、次第に言い訳も取り留めも、何もかもが宙に舞うように昇華されていった。
(中略)
 第二の人生を歩みたいんだ、とあなたは、申し訳なさそうに呟いてみせた。なぁ、栞。俺、憎まれてもいいんだ。嫌われてもいい。だけど第二の人生を歩みたいんだよわかってくれよ頼む、もうね疲れてしまったんだ。俺についてこないでほしい。頼むから。そう言って、うつむいた。
 頼むからだなんて、ずいぶんと図々しいことで。
(中略)
 家族が崩壊する瞬間はドラマや映画でいくつか見たことがあったものの、自分がいまそのような状況に直面していることにあまり現実味を感じていないわたしは、言葉よりも先に家の外できらめく夜の街に思いを馳せるばかりで、なかなか飲み込むことができない。
(中略)
 そっか。あなたは。
 父にまだ女を愛したいなどといった欲情があったことを、わたしはその時初めて知ったのだった〉

 作中では、不倫相手からの連絡が入っている父の携帯電話をめぐって両親がケンカしているのを栞が見つめるシーンが出てくる。ケンカの果てに携帯電話は床に落ちて折れ、父はいままで見たことがないような剣幕で激怒するのだが、これもまた彼女自身の体験を投影しているものと思われる。というのも、フォトエッセイ本『MANA』(サイゾー)におさめられている吉田豪との対談のなかで彼女はこんなエピソードを語っているからだ。

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