『凹凸』(KADOKAWA)
人気AV女優として活動する一方、昨年には小説家デビューも果たした紗倉まな。昨年2月に出版された処女作『最低。』(KADOKAWA)は、『64-ロクヨン-前編』で第40回アカデミー賞監督賞にノミネートされた瀬々敬久監督により映画化が決定したニュースを報じられたばかりだが、そんな彼女が早くも2作目となる小説『凹凸』(KADOKAWA)を今月18日に出版した。
前著『最低。』は、年齢も環境も違う4人のAV女優を主人公にした短編集で、作中には現役のAV女優として活動する彼女だからこそ書くことのできる「仕事観」や「人生観」といったものが色濃く反映されていた。
紗倉はエッセイやインタビューのなかで、14歳のときに父の書斎に隠されていたAVを見たのがきっかけでAV女優に憧れ、18歳の誕生日の翌日に自らプロダクションに応募メールを送ったことで、高専在学中からAVデビューしたとの経緯をあっけらかんと告白している。
しかし、AV業界最大手メーカーのひとつ、ソフト・オン・デマンドの専属女優として5年近く仕事をし続けていれば、そんな経緯で業界に入った彼女であっても心に抱えるものはたくさんある。親バレ問題、恋人とAV女優としての仕事との軋轢……彼女自身も抱いているのであろう、AV女優たちがもつそんな複雑な内面を仔細かつ冷静に描写した物語で、『最低。』は深い文学性を得ることに成功し、高い評価を得たわけだが、そんな心から血を流しながら生んだ前作の後で、果たして彼女に書くべきテーマがあるのだろうか? そう思いつつ『凹凸』を読んでみると、今作は『最低。』以上に心の傷をさらけ出す、壮絶な小説だった。
『凹凸』のテーマは「父」である。