しかし3月13日当日の午後になって、今度は産経新聞がDHCシアターのホームページでの「独自検証番組」の公開が決定したと報じた。記事によれば、DHCシアター側は〈MXでの放送を求めていたが、「BPOの結論が出る前に検証番組を放送してはさらなる混乱を招きかねない」(同局幹部)として認めなかった〉という。そして実際、昨日の午後10時からのMXでは別の内容が放送され、23時よりネット上でのみ『特別編』が公開されたというわけだ。
どうも『特別編』をめぐっては、DHCシアター側とMX間でゴタゴタがあったようだ。もちろん、こんなヘイトデマを積み重ねる番組を地上波で放送しなかった判断は当然だ。また、地上波放送局として徹底的に批判的な観点から検証する番組づくりが求められるのも言うまでもない。しかし、一方で今回の『ニュース女子』問題は、MXにも大きな責任があることを忘れてはならない。事実、MXは現在でも同番組のレギュラー放送を野放しにし続けており、問題の1月2日放送回に関しても、前述の見解のなかで〈事実関係において捏造、虚偽があったとは認められず、放送法及び放送基準に沿った制作内容であった〉と擁護。BPOの放送倫理検証委員会によるヒアリングに対しても「内容に問題がなかったので通した」などと説明したという。
つまり、MXが今回『特別編』の地上波放送を拒否したのは、番組内容に虚偽報道や差別的内容を認めたからというよりも、単に自社の保身のためにそうしたにすぎないのだろう。その背景に、DHCシアターの大元である化粧品大手・DHCがMXの最大のスポンサーであることが関係するのは想像に難くない。しんぶん赤旗によれば、MXの2015年(16年3月決算)での総売り上げ164億7000万円のうち、主な相手先としてDHCが23億5900万円(14.3%)で、2位以下を大きく引き離す1位であり、〈もはやDHC抜きのMXテレビはありえないほど、いびつな収益構造〉(1月20日付)と指摘している。ようするに、MXは金目当てでこんな愚にもつかないヘイト番組を放置している。そう見られても仕方がないだろう。
ヘイトデマをばら撒く『ニュース女子』については、今後も徹底した批判を続けなければならないことは言をまたない。だが、地上波放送局は社会の公器。同番組を放置し続けるMXテレビもまた、厳しく批判されるべきだろう。そして、今回の『特別編』のなかでとりわけ強調しておきたいのは、前述したとおり、安倍チルドレンの国会議員・西田昌司までもが参戦し、あろうことか在日ヘイトを展開したことだ。
『ニュース女子』に限ったことではないが、安倍政権は政府に批判的な報道番組には圧力を加えたり、出演を拒否しておきながら、お仲間の極右ネトウヨ番組には嬉々として助太刀。手を携えて沖縄を貶め、差別を煽動する。こんなことが許されていいはずがない。MXの「自社検証番組」では、ぜひこうした政治の状況についても真摯に追及してほしいものだ。
(小杉みすず)
最終更新:2019.08.28 03:09