●出光興産
『海賊とよばれた男』では描かれなかった創業者の歴史修正と右翼殺人テロ礼賛
極右度 ★★★★★
影響度 ★★
石油元売り業界第2位の出光興産。業界5位の昭和シェル石油との合併話が出光側の創業家の抵抗で泥沼化しているが、昨年末、その創業者である出光佐三氏(故人)をモデルにした映画『海賊とよばれた男』(原作・百田尚樹)が公開されたことは記憶に新しい。安倍首相も原作『海賊とよばれた男』は愛読書で、元旦には映画も鑑賞しに行ったという。
しかし、この出光興産という企業、百田の小説では“社員への愛情で溢れる愛国企業”というふうに描かれているが、そもそも、出光といえば“定年なし、タイムカードなし、労働組合なし”が有名で、実際は労組をタブー化するブラック企業の典型例と指摘されることも少なくなかった。そして、百田が“憂国の士”として美化する創業者・佐三氏は、実のところ「日本はいかなる場合でも自衛の戦争」と断言する先の戦争の肯定派で、「現在は、憲法をタテにとって、つまらんことばかりをいっておる」「なんといったって、天皇中心の憲法ですよ」と主張する戦前回帰の改憲派(過去記事参照)。さらには、なんと右翼による殺人テロを大絶賛するほどの極右人士であったのだ。
たとえば、佐三氏の四女で映像作家の出光真子氏がこう証言している。真子氏は出光家の強い家父長制のなかで常に父に怯え、学生時代の60年安保のときもデモに参加したことを言えなかったというが、他方で、同時期の浅沼稲次郎刺殺事件というテロについては、父・佐三氏がこう絶賛していたと自伝で綴る。
「一方、同じ年に起こった社会党委員長の浅沼稲次郎が、論壇で右翼の一少年山口二矢に刺殺された事件について、父は犯人の山口二矢をほめたたえた。そのときも、父と私はふたりきりでダイニング・ルームにいた。テーブルの向こうで、父は、私が女なのが残念でしょうがないといった様子で、男だったら彼を見習え、日本にも未だこういう若者がいたのだと、声を震わせている。父がこれほど激して人をほめるのを見るのは、私には珍しかった。
どんな理由があっても、人を殺すのはよくないとこころの中で思ったが、私は黙っていた」(『ホワット・ア・うーまんめいど』岩波書店)
まさに唖然とするほかない。ところが、こうした佐三氏の明確な極右性は『海賊とよばれた男』では完全にネグられ、お国のために身を粉にする熱血経済人に“毒抜き”されていた。しかし、佐三氏の遺志は、現在の出光興産にも脈々と引き継がれており、現在も労組がないばかりか、昭和シェルとの合併騒動では出光創業家が労組の有無を「企業文化の違い」として反対理由に挙げている。ここは、創業者・出光佐三の極端に右翼的なキャラクターを鑑み「極右度」を最大の★5とし、合併騒動の今後を見守っていくことにしよう。
(編集部/後編に続く)
最終更新:2017.11.15 07:22