たとえば、そのひとつがサザンオールスターズの「音楽出版権」をめぐる問題だ。音楽出版権というのは楽曲に関する権利を預かることで、音楽業界では、レコード会社などよりも、この音楽出版権を持つ会社が最大の利益を得ることができる。
バーニングは自社タレント以外の多くの楽曲の音楽出版権を傘下の「バーニングパブリッシャーズ」で所有しているのだが、その中に、サザンの大ヒット曲「勝手にシンドバッド」「いとしのエリー」などデビューから初期の5曲が含まれている。
サザンは大手芸能プロのアミューズ所属で、アミューズは自前の音楽出版会社をもっているのに、なぜバーニングが初期の5曲だけ音楽出版権を持っているのかは謎に包まれてきた。“周防社長が何らかの圧力をかけた”などと囁かれてきたが、これについて周防社長がこんな経緯を語ったのだ。
そもそも周防社長がデビュー前のサザンを知ったのはビクターのディレクター東元晃氏からサザンの歌5曲を聞かされたことだった。
〈「5曲聞いたら全部良かった。中でも気に入ったのが『勝手にシンドバッド』でした。『この曲でいきましょう!』と言った」〉
すっかりサザンを気に入った周防社長だったが、しかし既に所属事務所は決まっていたという。しかし周防社長は諦めなかった。
〈「それはないでしょう−−−−そんな感じで、1時間ほど粘って、東元さんが彼らを誰に預けることにしたか聞き出したんです」〉
そして聞き出したのがホリプロ社員だった奥田義行氏と歌手の井上陽水が立ちあげた「りぼん・なかよしグループ」という会社だ。周防社長は面識のあった奥田氏に連絡をとった。
〈「奥田君はぼくより1つ年下なんです。それで『東元さんから、グループを預かったって?』と連絡をとりました。『5000万円で譲ってくれないか』と持ちかけると、『周防さんがそう言うなら、わかりました』」〉
その後、周防氏はアミューズの大里洋吉氏(現・代表取締役会長)に電話をしてサザンのアミューズ入りを決定させる。こうした経緯からサザンのデビュー後5曲は「バーニングパブリッシャーズ」でもつことになったのだという。