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能年玲奈主演のアニメを町山智浩ら映画通がこぞって大絶賛! でもマスコミは能年の元事務所の圧力で一切無視

『この世界の片隅に』は、こうの史代による漫画を片渕須直監督がアニメ化したもの。太平洋戦争中、広島から呉に嫁いだ北條すず(のん)の目線を中心に、市井の人々の生活が戦争によってどんどん脅かされていく流れが描かれる。

 戦争が始まっているとはいえ市民の生活にはさほど大きな影響をおよぼしてはいない物語序盤から、だんだんと食べるものもなくなり、配給だけでは食いつないでいけないので、ついには野草を晩ご飯にしたりもする状況の変遷が生々しく描写される。また、軍港である呉は空襲の標的とされ、穏やかな生活から一転、毎日のように空襲警報が鳴るように。そして、物語は8月6日へと向かっていく。

 この作品の素晴らしさは、すずを中心とした劇中のキャラクターが実際に存在しているかのように活き活きとスクリーンに存在していることにある。それは片渕監督による徹底した下調べのたまものだ(この映画の制作には6年以上の時間を要している)。軍艦や戦闘機のディテールはもちろん、原爆投下後のきのこ雲の高さを計算したうえで呉から雲はどう見えていたのか、戦争が激化するにつれて庶民の服装はどう変化したか、かまどの煙突の材質はなんだったのか、当時の釘の頭には模様は入っていたのかといった細かいところまで、徹底して調査を行ったとインタビューで語っている。

 こういった時代考証は誠実なつくり手なら当然行うべきものであり、こうの史代の原作自体も徹底的な下調べの末に描かれていたものではあった。しかし、片渕監督がそれでもなおその作業を続けたのは、劇中の人物を実際に存在していたかのように観客に印象づけることが、「戦争のおそろしさ」を伝えることに直結するからだ。

「最初に原作を読んだ時に、すずさんみたいな人の上に爆弾が降ってくるようなことが可哀想で可哀想で仕方がなかったんですよ。で、その時に、これを絵空事じゃないものにしたいと強烈に思ったんです。一番大事なことは、すずさんという人が本当にいる人なんだと、僕ら作り手たちが完全に信じきって作らないといけないと。
 だから、それを実現するための手立てが、ここまで話してきたように、第一には時代や風土を徹底的に考証して背景やシーンに落とし込むということであった」(映画パンフレットより)

 ただ、いくら時代考証を重ねても、肝心の役者が北條すずに命を吹き込めなければ何の意味もない。

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