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産経新聞が日テレの「南京虐殺」検証番組を「裏付けなしの謀略宣伝」と攻撃! でも捏造と謀略は産経の方だった

 しかし、産経が唱えている説は以前から南京虐殺否定論者が主張してきた「自衛発砲説」と呼ばれるもので、事実として証明されているわけでもなんでもない。根拠は戦後にまとめられた連隊長の両角業作の弁明の手記で、多くの矛盾が指摘されているものだ。実際、保守派の歴史学者の中でも「自衛発砲説」には否定的な見方が強く、秦郁彦氏などは「もし釈放するのならなぜ昼間につれ出さなかったのか、後手にしばった捕虜が反乱を起こせるのか、について納得の行く説明はまだない」(『南京事件 増補版』文藝春秋、2007年)と切って捨てている。

 こんな怪しげな説を平等に紹介しろ、と要求するだけでも噴飯物だが、さらにもっと唖然とさせられるのは、産経が番組攻撃のために真っ赤な嘘をついていたことだ。

 実をいうと、日テレのドキュメンタリーはこの自衛発砲説に、きちんと踏み込んで検証しているのだ。

 日本兵たちの日記の記述を検証し、なぜ揚子江岸で捕虜の銃殺がなされたのかを考察するくだりで、番組は、「戦後になって『捕虜を解放するために揚子江岸に連行したが暴動を起こされやむなく銃撃した』という証言がなされた」と具体的に紹介したうえ、31冊もある日本兵たちの日記(1937年当時の一次資料)に「捕虜を解放しようとした」という記述はひとつもなかったという事実を明らかにしている。

 ところが、産経は自分たちの主張する自衛発砲説が根拠薄弱であることを暴かれたこの放送部分を一切無視して、番組が自衛発砲説に触れなかったと言い張った。これこそ捏造以外の何物でもないだろう。


■客観的な証言をネグり「中国の謀略宣伝と同じ」と陰謀論展開

 しかも、産経はこうした卑劣な攻撃を繰り返す一方で、南京虐殺否定派の学者である北村稔・立命館大学名誉教授を登場させて、こう書いている。

「北村は(番組が)客観的根拠を明示せずに『ほのめかし』を駆使していることについて『中国の謀略宣伝のやり方と酷似している』と批判する」

 ここまでくると、もはや笑うしかない。なぜなら、番組はほのめかしとは真逆の、虐殺の客観的な証拠をいくつも明示しているからだ。

たとえば、そのひとつが「支那事変日記帳」というタイトルがつけられた日誌だ。この日誌は陸軍歩兵第65聯隊と行動を共にした、山砲兵第19聯隊所属の上等兵の遺品で、昭和12年9月から南京が陥落するまでの3ヶ月間、ほぼ毎日書かれている。そこには、ごく普通の農民だった男性が中国で民間人から物資を奪い、銃口を向ける様などが詳述されていた。

〈11月16日、食料の補給は全然なく、支那人家屋より南京米、その他の者を徴発して一命を繋ぎ、前進す〉
〈11月17日、「ニャー」(注:中国人女性)を一人連れてきたところ、我らの目を盗んで逃げたので、ただちに小銃を発射し、射殺してしまう〉
〈11月25日、実に戦争なんて面白い。酒の好きなもの、思う存分呑む事ができる〉

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