しかし、この言葉も「草食男子」同様、意味が180度真逆に変化していく。男の要求をすべて飲み込んで尽くす女は最上級の女性、だから「プロ彼女」なのだとカテゴライズし直され、能町氏が批判したタイプの女性を賞讃する意味に転倒してしまった。
女性ファッション誌「ViVi」(講談社)15年4月号の特集「なれるものなら“プロ彼女”!!」は、まさしくその典型で、〈今、モテ男性有名人が続々結婚している相手として話題の“プロ彼女”。男性の要求をすべて飲みとことん尽くすのが特徴。なるのは大変そうだけど、なれば一流の男をGETできる!?〉などと煽られていた。
能町氏はこのことに激怒。「週刊文春」のコラム上で「ViVi」から取材依頼があったことを明かしつつ、わざと意味を歪めようとしているのだと主張した。
〈私はこの単語を褒め言葉として広める気はないので(取材依頼を)断ったのです。だから、あとで私に文句を言われないようにやたら定義が丁寧に書いてあるんでしょう〉
〈言うまでもないけど、私は皮肉で言ってたのです。今どき召し使いに徹して芸能人の妻という名誉や財産を手にするなんて「プロ」の女だ、と〉
〈皮肉な言葉が褒め言葉として使われているのが悔しい。(中略)これでは私の生み出した言葉が古すぎる価値観の女を再生産することになってしまう〉
時代に先んじた意味をもっていたはずの言葉が意味をねじ曲げられ、保守的な意味合いに矮小化される。現在の世の中の風潮を見る限り、今後も「草食男子」「プロ彼女」と同じ運命をたどる新語が生まれ続けるのではないかと考えると、暗澹とした気分になってしまうのである。
(新田 樹)
最終更新:2018.10.18 03:38