芸人になってからの彼は、同業者からも認められる才能をもち、芸人のなかではイケメンだという評価も得ていた。青春時代の鬱屈を取り返そうとすればいつでもできたはずなのだが、それでも多感だった時期に溜め込んだ暗さや劣等感を忘れずに抱きつつけたことが、ネタやトークのオリジナリティにつながっていたのは間違いない。
また、こういったことのほかにも、もうひとつ彼を苦しめたことがあった。それは「コンビ格差」だ。先日、当サイトでもダイノジの大谷ノブ彦が、相方である大地洋輔の「世界エアギター選手権2006」優勝をきっかけとしたブレイクによりコンビ間のパワーバランスが崩れてしまった結果、自殺未遂まで起こしていたエピソードを紹介したが、高橋の場合も最近は俳優として多くのドラマや映画に出演する今野浩喜との間で格差が生まれたことを苦にしていた。
しかし、仕事量で明らかな差がついていたのにも関わらず、給料はコンビの間で平等に折半していた。相方に比べると、彼は2〜3割ほどの売り上げしかなかったが、それは高橋の父親をめぐる経済状況を考えての好意だった。前述の借金のほかにも、多発性脳梗塞に加えて認知症も進み、介護を必要としていたからだ。公判では涙ながらにこう語っていたと言う。
「僕の経済状況もわかってくれていたので、ありがたく折半にしてもらっていたのですが……、恵んでもらっているような申し訳ない気持ちになりました」
判決が言い渡された際、裁判長はこう付け加えている。
「問題の根はそうとう深い。更正は簡単なことではないと懸念しています」
被害者の多くとは示談が成立しているとはいえ、心に傷を抱えたかもしれない女性が存在している以上、彼の行動は擁護できるものではないが、その裏にはこういった事情を抱えていたのだと知ると、なんともやるせない気持ちになってしまうのである。
(林グンマ)
最終更新:2017.11.24 07:38