『再生』(KADOKAWA)
5月31日に覚せい剤取締法違反で懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を受けた清原和博。先日は宮古島でバカンスを楽しんでいる様子を「FRIDAY」(講談社)に撮られるなどしたのも記憶に新しい。そんな清原が逮捕されマスコミが大騒ぎとなったとき、突如注目を浴びたあの男が本を出した。かつて読売ジャイアンツで清原とチームメイトであった野村貴仁氏である。
9月末に上梓した自伝『再生』(KADOKAWA)では、自身の薬物をめぐるトラブル(彼もまた覚せい剤取締法違反で懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を受けている)から、清原、ひいては巨人軍にまん延していたドラッグ事情についてまで赤裸々に綴っている。
野村氏が薬物に手を出すきっかけとなったのは、巨人移籍前、まだ彼がオリックス・ブルーウェーブに所属していた時のことだった。ひどい鼻炎を患い、投球にも悪影響をおよぼし始めていたのを見たチームメイトのフレーザーが緑色のカプセルを渡してくれたという。それが、グリーニーだった。
グリーニーは興奮剤の一種で、服用すると気持ちが高ぶったり、疲労を感じなくなったり、運動能力が向上するように感じたりする。2000年代に入ってからは世界アンチ・ドーピング機関(WADA)がグリーニーを禁止薬物として指定。それに続くように、メジャーリーグや日本のプロ野球でも使用が禁止されている。
そんなグリーニーだが、野村氏が巨人に移籍すると、そこでもその薬物がまん延していた。グリーニーの原産国はメキシコ、グアテマラといった中米の国々であり、グリーニーを他の選手に譲渡していたのは主にそういった国からやってきた助っ人外国人たちだった。当時のジャイアンツでは、ガルベスがドミニカ共和国出身、デセンスがメキシコ出身で、彼ら自身、試合や練習の時にグリーニーを頻繁に使っていた。さらに他の選手にグリーニーを譲渡していたため、当時のジャイアンツでは、ガルベス経由で手に入れるグリーニーを「ガル薬」、デセンス経由の場合は「デス薬」と呼ぶ隠語すらでき上がっていたという。その時のチームメイトでグリーニーを使っていなかったのは、槙原寛己、高橋尚成、桑田真澄、松井秀喜ほか何名かほどしかいなかったと野村氏は綴っている。
もちろん、同書には、清原和博に覚せい剤を提供した問題も書かれている。オリックスと西武、お互いもともとはパ・リーグにいながら特に親交はなかった二人が同じチームになり初めて交わした言葉は、練習中に清原からかけられたこんな衝撃的なものだったという。
「おう、マリファナやったことがあるか」「マリファナを仕入れてもらえへんか」