さらに、対談での話題が徴兵制に移ると、佐藤氏が「現状では必要ないと思います」「採用枠が決まっているので入隊を希望する若者たちを面接でほとんど落とさざるを得ないんです」と話しているのにもかかわらず、稲田氏はこんな提案をするのだ。
「教育体験のような形で、若者全員に一度は自衛隊に触れてもらうという制度はどうですか。自衛隊について国民はまったく知らないし、国防への意識を高めてもらうきっかけにもなると思います」
この提案に対し、佐藤氏は「それは実現してほしい」と言い、「自衛隊の教育は半ば強制です。若い子たちは、逆立ちしても適わない、あやかりたいと思えば服従します。陸自のレンジャー隊員などには何をやっても絶対に勝てませんから、一週間、一緒に訓練するだけで、自然に「先輩!」と敬うようになる。これは、あらゆる教育の原点だと思います」と発言。力で言うことを聞かせるという恐ろしい暴力を教育などと語っているのだが、これに稲田氏が「「草食系」といわれる今の男子たちも背筋がビシッとするかもしれませんね」などと同調したところで対談は締められている。
社会保障よりも軍事費の強化。日本独自の核保有。若者への強制的な自衛隊体験入学。──なんとも勇ましい発言の数々ではないか。
いや、それだけではない。前述したように、稲田防衛相は30日の予算委で、辻元議員から過去の「自国のために命をささげた方に感謝の心を表すことのできない国家であっては防衛は成り立ちません。これは日本という国家の存亡にまで関わる」「いかなる歴史観に立とうとも国のために命をささげた人々に感謝と敬意を示さなければならない」という発言を持ち出され、靖国や戦没者追悼式欠席が言動不一致だと追及を受けた。
だが、稲田氏はこの対談でも靖国問題に触れ、こんなことを言っている。
「最近、安倍元首相が就任後になぜ靖国神社を参拝されなかったのかを考えます。政権を安定させてから参拝するということだったと思いますが、結局、自分の国を自分で守れない国であれば、正しいことを正しいと言い、正しいことを行うにも限界がでてくるということではないかと思うんです」
稲田氏は2010年12月に行われた集会で「私たち一人ひとり、国民の一人ひとり、みなさん方一人ひとりが自分の国は自分で守る。そして、自分の国を守るためには血を流す覚悟をしなければなりません」と勇ましく語ったことがあるが、この対談でも、いまの日本は国民が血を流して自国を守れない国だから正しいことも言えず靖国参拝もできない、と嘆いていたのである。