「今回、火をつけたのはアゴラと産経だが、この話はその前から、内調関係者がしきりに口にしていた。アゴラはともかく産経がここまで踏み込んだのも、内調のオーソライズがあったからだといわれています。北村さんが官邸と連携して仕掛けた可能性はかなり高いでしょうね」(全国紙政治部記者)
まさに「官邸のアイヒマン」にふさわしい暗躍ぶりを示す内閣情報官・北村氏だが、実は、その思想の恐ろしさを示すような事実が発覚した。
北村氏がもともと公安警察出身であったことは前述したが、2年前、その警察関係者向けに出版された専門書のなかで、戦前・戦中の特高警察、弾圧体制を生んだ法体系を高く評価していたことが発覚したのだ。
この事実を報じたのは、8月18日付のしんぶん赤旗。同紙はが「秘密法強行主導の政府高官 戦中の弾圧体制 礼賛」との見出しを掲げ、北村氏が『講座警察法』なる本のなかで、〈太平洋戦争を「大東亜戦争」と表記したうえ、その勃発後は「その(外事警察の)影響力は飛躍的に拡大した」とのべ、国民を血の弾圧で戦争に動員した暗黒体制を礼賛しています〉と書いている。
官邸の諜報機関とも呼ばれる内調のトップが、戦前の言論弾圧を礼賛していたとすれば穏やかではない。早速、『講座警察法』第三巻(立花書房)に収められた北村氏の論文「外事警察史素描」を読んでみた。
くだんの論文はまず、このようにして始まる。
〈我が国が近代国家として誕生してから、外事警察は、国家主権といわば不即不離の形で発展を遂げてきた。本稿は、戦前・戦後を通じた外事警察の組織としての歴史的歩み、任務及び権限、現在直面する課題を素描することにより、いささかなりとも外事警察の全体的な理解に資そうとするものである。〉
いかにもエリート官僚的な書き出しだ。「外事警察」というのは、外国のスパイなど諜報活動やテロ活動など担当する警察の部門で、現在の公安部外事課(1〜3課)などが相当する。北村論文によれば、日本の外事警察は20世紀の訪れとともに成立したという。
〈明治三十二年は、日清戦争に勝利した我が国が、明治政府成立以来の悲願であった治外法権の完全撤廃を達成し、欧米列強に並び立つ独立主権国家として産声をあげた年であった。それは、同時に外事関係取締り法規が整備された年でもあった。〉