「私、定年退職したオジサンってどうして右傾化していくんだろうと思っていたんですが、みんなアプリで無料の産経を読むんですよ。お金がなくて新聞とれないから。それを毎朝読んでいるからじゃないかと」
定年退職したオジサンがお金がなくて新聞が取れないかどうかはともかく、ネットにおいて産経新聞のニュースサイトの存在は確かに大きい。というのも、産経は大手メディアのなかでももっとも早くニュース配信の無料化を行ってきたからだ。
2007年10月、産経新聞は日本マイクロソフトが運営するポータルサイトと提携し「MSN産経ニュース」をスタートさせた。
当時既に「YOMIURI ONLINE」(読売新聞)、「アサヒ・コム」(朝日新聞)、「NIKKEI NET」(日本経済新聞)などがあったが、無料なのは記事冒頭だけで、その後は有料だった。しかし「MSN産経ニュース」だけはすべて無料だったことで、多くのポータルサイトも「MSN産経ニュース」をピックアップする割合が大きくなっていく。
幸いなことにMSNは2014年10月に産経との提携を解消し、複数紙の配信を開始したが、ネットにおける産経の影響力は未だに残ったままだ。実際、その影響力についてニュース解説の第一人者である池上彰もこう言っている。
「ニュースについては、最初にネットで無料配信を始めたのは産経新聞です。いまは他紙も公開するようになりましたが、産経の流通量は多いから、基本若者たちが得るニュースは産経新聞のものです。紙では産経新聞は部数が少なく影響力は極めて低いけれど、ネットでは圧倒的なのです」(「世界」2014年12月号/岩波書店)
新聞じたいの発行部数は少ないが、ネット界では絶大な影響力を誇る産経。たしかに、“オジサン”たちが 無料の産経ニュースによっていつしか洗脳されネトウヨ化したというのは、よくあるケースらしい。
しかも、1990年に林と見合い結婚した夫は、典型的な理系人間で、当時売れっ子作家の林の存在すら知らなかった浮世離れした人物として知られる。また、ことあるごとに林に“妻らしさ”を求めてくることも、林自身が面白おかしくエッセイなどに綴ってきた。