実際、今回の賄賂問題を追及している「選択」(選択出版)6月号は、「今回の裏金問題でもJOCの支出にゴーサインを出せるのは高橋氏しかいない」という内部関係者の証言を紹介していた。
日本政府やマスコミは、今回の高橋氏の主張と同様に、「どこの国でもやっていること」としてうやむやにしようとしている。ロス五輪に出場経験もある馳浩文科相は5月17日の会見で「あれは買収ではない。多数派工作だ」などと、開き直った。
しかし、これは高橋氏や馳氏がどっぷりつかった国際スポーツ界という、一種歪な世界の“常識”でしかない。今回の裏金疑惑の発端となった世界アンチ・ドーピング機関(WADA)の報告書には〈『マーケティング・コンサルタント業』が、不正な賄賂を隠す便利な隠れ蓑であるということは捜査当局間の共通認識〉との記載もある。また、IOCの倫理規定も同様に、〈いかなる性質の報酬、手数料、手当、サービスを間接的にも直接的にも受領、提供してはいけない〉とある。
そして、この東京五輪の賄賂疑惑発覚のきっかけとなったフランス検察当局による国際陸連の大規模汚職捜査は現在も続いている。その全容が明らかになったとき、日本の捜査機関やマスコミは本当に不正を糾せるのだろうか。
(伊勢崎馨)
最終更新:2017.12.05 09:58