しかし五輪組織委員会理事としての見解を問われると、今度は、「資金提供はどこの国だってやっている」と開き直ったような五輪招致、“裏金”に対する持論を展開したのだ。
「こういうことは必ずあるんですよ。どこの国で開催したときも、毎回あるの。どこにでもある。それをいちいち気にしていたらオリンピックなんて呼べないし、できない」
「BT社(ブラックライディングズ社 IOC委員会ラミン・ディアク氏の息子のパパマッサタ氏の関連会社)へのコンサルタント料については、何の問題もない。さっきもいったとおり、どこの国だってみんな、同じことをやっているんだから」
高橋氏はその後も何度も「どこの国でもやっている」と繰り返し、「よくぞ東京にオリンピックを呼んでくれたと、称賛すべきです。何で寄ってたかって水をさすのか」とマスコミ批判まで展開、挙げ句、東京と競った他国のことまでこうあげつらった。
「そんなこと言ってたら、オリンピック招致した国は極悪人国みたいになっちゃうよ。僕がこんなこと言ってはおかしいけど、あのとき競争したスペインやトルコはみんな国を挙げて買収作戦をしていたわけですから」
語るに落ちるというのはこういうことだろう。自分は関係ないと否定しながら、「どこの国だってやってる」「みんな国を挙げて買収作戦をしている」と、事実上、買収工作を認めてしまったのだ。
実際、どう否定しようとも、五輪の招致工作のプレイヤーたちの接点として浮かび上がっていることは否定のしようがない。
前述したように、今回の賄賂疑惑は、招致委員会が決定前後の7月と10月の2回にわけて、BT社の口座に合計約2億3000万円を振り込んでいたというものだ。
BT社の代表で口座の持ち主は、イアン・タン・トン・ハン氏。タン氏は、国際陸連前会長のラミン・ディアク氏(セネガル出身)の息子であるパパマッサタ・ディアク氏の親友だといわれているのだが、このラミン氏は国際オリンピック委員会(IOC)委員を兼任しており「アフリカ票」の取りまとめ役だった。つまり、招致委員会→BT社のタン氏(電通の紹介)→ラミン氏と金が渡り、開催地票の操作につながったと見られているのである。