全日空HPより
今シーズンの最後を締めくくるフィギュアスケート世界選手権が、日本時間の3月31日、いよいよ開幕した。マサチューセッツ州ボストンで行われた男子ショートプログラムでは、羽生結弦が2位に12点近く差をつけ、自身のもつSP歴代最高点につぐ110.56点という好成績で首位スタートを切った。
演技を終えると「おっしゃー、見たか!」と叫んだ羽生。王子様然とした外見とちがって中身は“熱い男”で知られる羽生らしい瞬間だったが、今回の世界選手権には並々ならぬ気合いが入っているのか、競技前から激しい感情をあらわにする一幕があった。
それは、競技当日に行われた公式練習でのできごと。羽生選手がSPで使用する「バラード第1番」を流しながら滑走していたところ、それを妨げる場所でカザフスタンのデニス・テン選手がスピンをしており、危うく接触しそうになるアクシデントがあった。その際、羽生選手は「それはねえだろ、お前!」と珍しく声を荒らげ、テン選手への怒りをあらわにしたのだ。
フィギュアの公式練習では「曲をかけて滑っている選手が優先される」という暗黙のルールがあるのだが、前日に行われた公式練習でも羽生とテンはニアミスしており、テンの“マナー違反”に感情がおさえられず声を荒げたようだ。さらに羽生が「たぶん故意」と語ったことから、一部の熱狂的な羽生ファンからはテン選手に対する非難の声があがっている。
しかし、一方で羽生アンチのフィギュアファンからは「羽生のほうこそ、当たり屋のくせに」「また羽生が当たり屋したのか」といった声も上がっているのだ。2014年のグランプリシリーズ中国杯で羽生選手が公式練習中にエン・カン選手とぶつかり、流血しながらも競技に出場したことは記憶に新しい。しかし、昨年末のフィギュアスケート全日本選手権の公式練習でも羽生は村上大介と衝突し、村上が左ひざを痛めたということもあった。こうした羽生の過去の衝突やニアミスを挙げ、羽生アンチのフィギュアファンは以前から羽生を「当たり屋」と評しブーイングしていたのだ。
そもそも限られたスペースで5〜6人の選手が同時に滑走する公式練習では、羽生に限らず多くの選手が衝突したり負傷したりというアクシデントに見舞われており、その危険性は常々指摘されている。試合直前ともなればどの選手も自分のことに集中しておりどんなに気をつけていても周囲のことは見えなくなりがちで、単純にどちらが悪いと言えるようなものでもなく、選手同士が責め合ったりすることもあまりない。
しかし、それぞれの選手に思い入れの強すぎるフィギュアファン=スケヲタは、そうはいかない。見方によってどちらが悪いとも言い切れないだけに、接触アクシデントをめぐっては、互いの立場を主張し非難の応酬となりがちだ。