「17 February 2014」の日付のある「Acid-bath stem-cell study under investigation」というタイトルのついた若山氏のインタビュー記事にはこんなくだりがあった(本サイトで独自に訳したため、『あの日』の訳とは少し違っているが、ご了承いただきたい)。
〈実験のプロトコルがたんに複雑なのかもしれない。若山でさえ、結果を再現するのに苦労していた。彼と彼のラボの一人の学生は、小保方の十分な指導を受けたのち、論文発表の前に実験を独自に(independently)再現した。しかし、若山が山梨に移ってからは、成功していないようだ。「酸を加えるだけといえば簡単な技術に見えます。しかし、そう簡単ではないのです」と彼は言う。〉
〈若山は、小保方の結果の再現を自分が独立して成功したこと(independent success)は、この技術の有効性を十分に確信させるものだ、と言う。また彼は、小保方がつくった細胞は、(新たな受精卵は別として)いまのところ胎盤を形成することの可能な唯一のものであるから、細胞がすり替えられることなどありえない、と注釈する。「私は自分自身で実験し、確認しました」と彼は言う。「実験結果は絶対に正しいと確信している」〉
実際、若山氏はある時期まで、ES細胞は胎児の組織しか形成しないが、STAP細胞は胎盤の組織も形成する、と強く主張していた。それが、途中から突然、態度を一変させ、STAP細胞の正体はES細胞であり、小保方氏がすり替え犯であることを示唆し始めたのだ。
この極端な豹変はなんなのか。だったら、なぜ、以前はSTAP細胞がES細胞とちがう特徴をもっていると断言していたのか。
説明のつく理由がひとつ考えられる。それは若山氏が、かなり早い段階から、STAP細胞の正体を知っていたという可能性だ。
もちろん、小保方氏と若山氏が最初から共謀して、ES細胞をSTAP細胞と偽って、論文をつくったというのは考えにくい。すでに高い名声を得ている若山氏がそんなリスクを冒すとは思えないからだ。
しかし、途中からは、若山氏もSTAP細胞がES細胞であることに気づいていたのではないか。そうでないと、その後の行動の説明がつかないのだ。
以下はまるっきり推測だが、こういう風に考えられないだろうか。最初、若山氏は、小保方氏の研究内容を聞いて、半信半疑だった。しかし、Oct4-GFP発現の実験方法を指導すると、小保方氏は答えを出した。それを見て、若山氏はこれが画期的な研究になると判断し、「ネイチャー」誌への投稿や特許申請に前のめりになっていった。
そして、「ネイチャー」のためにこういう実験結果がほしいと小保方氏に高いハードルの要求を突きつけ、小保方氏がそれに応えるという形で、実験が進んでいった。ところが、途中から、ほしい答えがあまりにも期待通りに返ってくるため、若山氏は小保方氏を疑い始めたのではないか。もしかしたら、これは、ES細胞がすり替わっているだけかもしれない、と。