昨年川崎にある有料老人ホームで虐待や不審死が多く話題となったが、しかしこれは特殊なものではないようだ。食べ物を無理に口に運ぶ。車椅子にベルトで縛り、体調が悪くなっても救急車を呼んでくれない。ときには不審な死亡事例もある。
だがその背景には介護職員の劣悪な労働環境や低賃金、その結果の人手不足、老人ビジネスに群がる法人やそれに対応できない行政の問題もある。また親や配偶者の介護のため離職せざるを得なくなり、共倒れ貧困に陥るケースも激増している。
しかもこうした現状にも関わらず、安倍政権では高齢者を介護サービスから「在宅介護」に戻す政策を進めているのだ。そうなれば、さらに行き場を失う高齢者が溢れ、家族の負担も増大するばかりだ。
まさに老後は八方塞がりの「地獄」が待っている。
さらに少子高齢化、そして年金や医療制度の崩壊が進む将来は、どんなことになってしまうのか。内閣府の調査では65歳以上の貧困率は22%という驚愕の結果が出されており、しかもそれは90%にまで及ぶという予測さえあるが、現在においても根本的対策はないに等しい。
そうなれば個人で防衛をするしか手段は残されていない。個人に責任を押しつけ、全てはカネ次第という日本の介護の現状の前で、私たちは立ち尽くすしかないのだろうか。
(伊勢崎馨)
最終更新:2016.02.09 08:17