きっと、国民の多くは、なぜ、こんな人物がなんの責任もとらされないまま五輪組織委会長の椅子に居座ったままでいられるのか、と思ったことだろう。
しかし、その答えは簡単だ。安倍首相がバックについているから、それにつきる。
「下村大臣が6月、あまりの建設費高騰で安倍首相に別の案に変更を進言した際も、安倍首相から『森さんの了承を得ないと無理だ』と言われ、その結果、変更は実現しなかった。とにかく、安倍首相の森さんへの気の使いようは尋常ではなく、五輪については全権委任という状態。その空気が遠藤(利明)五輪担当相や文科省、組織委にも広がっていますから、解任なんてできるはずがない」(全国紙政治部記者)
実は、そもそも森氏の組織委会長就任の際も、安倍首相がゴリ押しし、ねじこんだことがわかっている。
IOC総会で2020年五輪の開催地に東京が選ばれたのは2013年9月7日。それからわずか1ヶ月後の10月12日、新聞が一斉に、〈安倍晋三首相が2020年、東京五輪開催に向けた準備を総括する大会組織委員会会長に森喜朗元首相(を充てる方向で調整していることが分かった)〉と報じた。
「実は、森さんの五輪組織委会長は、招致決定前から決まっていたようです。安倍首相と森氏は8月に少なくとも2度、会っています。一度目は山口で、下村文科相をまじえて。二度目は笹川陽平日本財団会長の別荘に一緒に泊まり、ゴルフを楽しんでいる。そのときに、招致したら組織委の会長を森氏にやらせるという話が出ていたようです。さらに、9月に入って、森元首相が直接、安倍首相のところに『おれにやらせろ』と念押しの直談判をしてきたともいわれています。この圧力に押される形で、安倍首相が森氏の就任を決定。10日に官邸から既成事実化のための新聞辞令として情報がリークされたということのようです」(前出・全国紙政治部記者)
しかし、この動きに、反発したのが当時の東京都知事、猪瀬直樹だった。猪瀬前都知事は会見で、こうした報道について「森元首相の話はどこから出たか知らないが、全然議題に上がっていない」「(権限がない場所で)決めても、決めたことにならない」としたうえで、こう断言したのだ。
「(会長は)東京都とJOCで決める。いろんな人が今、こういう時期に便乗して出てくる」
「人選は安倍首相がやるわけではなく、ぼくのところでやる」