「今回、安倍総理が久しぶりに日中、日韓の対話ができたことを本当に嬉しく思っています。これからの日本の将来を考えると労働力がなくなるということは、力をもってして外交を進めていくという余力はありません。ですから、対話に次ぐ対話。なによりも科学技術をはじめ経済力も、優っているわけですから。そこを武器として取り組んでいかなければならないんじゃないか。中国も韓国も、私たちと同様に経済に不安を抱えています。そこが一つの突破口となるわけですから。それについて、南沙の問題を棚上げするくらいの活発な経済政策のやり取りとか、お互いの目先のメリットに繋がるような二国間の交渉とかをやっていかなくてはいけない。大人の知恵として……」
読んでいただければお分かりの通り、極めてまっとうな意見である。ところが、ここでキャスターが野田氏の話を遮るように「経済の関係が深まれば、じゃあ中国が埋め立てを止めてくれるかというと、なかなかそうはいかないじゃないですか」と茶々を入れた。それがきっかけで炎上の発端となる「日本に関係ない」発言が飛び出したのだ。
野田氏はさらに、安倍首相や菅義偉官房長官らが南シナ海への自衛隊派遣をも目論んでいることを念頭に置きつつ、こうも言った。
「いま確かに安全保障法制ができたけれども、まだまだ不完全だし、国民にとっても100%応援をしていただける環境にもないわけです。(こんな環境で)自衛隊の人に無理やり何かをさせることは、逆に今後の自衛隊の動きを阻むことになりますから。それとリンクさせずに、冷静に。南沙で何かあっても、それは日本に対してのメッセージではない。だから、日本は日本として独自路線で、対中国、対韓国との、日本らしい外交をしていくということに徹するべきだと思います」
要するに野田氏が言っているのは、こういうことだ。日本にはもはや力を背景に外交を推し進めていく余力はない。逆に経済や科学技術といった強い武器があるではないか。中国が南シナ海でやっていることは日本に対して物申しているわけではない。アメリカが軍艦を出したからといってホイホイその尻馬に乗るのではなく、日本独自の日本らしい外交を展開していくべき──。与党内からこうした“正論”があがることを安倍氏や菅氏が気に食わないのはよくわかるが、これのどこが“問題”なのか。
野田批判の声でいちばん多いのが、「シーレーンをわかっていない」というものだ。例えば、政治学者の岩田温氏はブログでこう書いている。
〈日本は輸入に依存している貿易国であり、その貿易の多くを海に頼っている。すなわち、国際社会における自由航行こそが、日本の生命線なのであり、この問題を「直接日本には関係ない」などといってのける人間は、日本の現実を無視している〉