上に紹介した記事のなかで、朝日新聞の取材に対して厚生労働省保護課の担当者は「生活保護の制度上、国籍で受給を判断することはありません」と返答し(朝日新聞14年11月18日付「在特会の言う『在日特権』、あるの?」)、「SAPIO」誌上でも取材に対して自治体の保護課担当者が「いかなる歴史的背景があれ、現在、優先的に生活保護が支給される対象はいません。日本人と同様、あくまでも規則に沿って申請を受け付けているだけ」(「SAPIO」15年2月号「『在日特権』あるのかないのか徹底的に調べてみた」)と応じている。さらに「FLASH」もジャーナリスト・安田浩一氏や元朝鮮総連職員への取材をもとに「生活保護法は(略)あくまで政府や自治体による行政判断によって支給されているにすぎない」(「FLASH」13年10月15日号「在日特権は存在するのか?」)と、「在日優先受給」の事実を完全否定。左右を問わず、さまざまな媒体がこうした事実検証を行ってきた中で繰り返された今回の「在日は生活保護が簡単に受けられ」る発言は、脱力するほど何も変わらない、いや「変わりたくない」ネトウヨの心性そのものを照らし出している。
元来、ネトウヨのバッシング対象は在日韓国・朝鮮人に限られていたはずが、ここへ来て難民、(元在日も含めた)帰化者とそのバリエーションは増える一方だ。だが根も葉もない「在日特権」デマが肥大化した2000年代以降の状況を思い返せば、こうしたネガティブ・キャンペーンのひとつひとつをあなどってはいけない。姿かたちを変えて再登場するヘイトデマの1つ1つを、徹底的に断ち切っていく必要がある。モグラ叩きのようで気が遠くなる作業だが、中のモグラ達にヘイトという栄養分を与え続ける親元は同じだ。諦めずにハンマーを握りしめ続けたい。
(松岡瑛理)
最終更新:2015.10.17 10:24