つまり、森会長がこうした異常な人事と組織作りを行ってきた結果、起きたのが、国立競技場問題であり、エンブレム問題だったのだ。JOC元参事の春日氏はこう言う。
「五輪運営のノウハウを持つ人間が排除された結果、“素人”が『著名人を集めてデザインを公募しておけば、文句は言われないだろう』くらいの甘い考えでやったんでしょう」
「五輪の世界では約束を破ることは絶対に許されない――そういうことがわかっている人間が最初から関わっていれば、無責任に建設費を膨らませたあげく、一から設計をやり直すなんて失態を演じることにはならなかった」
だが、森会長に責任を取ろうなんていう発想はまったくない。組織委元幹部は森会長の本音をこう暴露する。
「組織委の会長として力を誇示している森さんは、東京五輪を自分の晴れ舞台にしたがっているんです。開会式のときには80歳を超えているのにね。“老害”そのもの」
こんな人物が、世界的祭典である五輪の運営をすべて牛耳り、まったくの専門外である競技場建築やデザインにまで口を出していたのだ。JOC元参事の春日氏は「このままだと本当に東京五輪開催危機もありえます」と警告を発しているが、森会長がいるかぎり、危機はずっと続くだろう。
JOC元幹部は、この座談会で「もうJOCはケツをまくって、森会長率いる組織委と対決するしかないんじゃないかな」と結論づけていたが、東京五輪関係者はぜひ、それくらいの覚悟で森会長を引きずりおろして欲しい。
(伊勢崎馨)
最終更新:2015.09.09 06:29