すると、安倍首相は満面の笑みを浮かべながら、「よく“暴走”と言われるんですけど、“暴走”して私がどこにいくんですか? 私はそれが聞きたいんです。いったい“暴走”して私が何をするんですか?」と返すのだった。そしてすぐさま、宮根が徴兵制の話題を持ち出し、安倍首相の「徴兵制はありえない」という話を引き出してフォローする。もはや通販番組並みのシナリオがあるとしか思えないタイコ持ちぶりだった。
いや、『ミヤネ屋』がPRしたのは安保法制だけではない。元NHKワシントン支局長で外交ジャーナリストの手嶋龍一にいたっては、唐突に安倍首相が70年談話を「自分で書いた」という“想像”を披露。こう安倍首相を大絶賛したのだ。
「一般にはですね、あれは役人が書いたと誤解されているのですが、僕らジャーナリストからみますと、あの文面はほとんど総理お一人でお書きになったんです。しかも、アメリカの上下両院の演説がありましたが、あれ、泣いている上院議員もいましたよね。あれはお一人で書いたとお認めですか」
これには安倍首相の表情もご満悦。なんなのだろうか、この茶番劇は……。
そして、最後は宮根が笑いながら「いつもおいしいところでご飯食べてはる。誰が(食事を)選んではるんですか」とおどけたかと思えば、安倍首相も「いっしょに今度(ご飯)行きますか。大阪で」とモーションをかける。本サイトでも何度も指摘してきたように、メディアと権力者との会食なんていうのは、本来、やってはならないことなのに、宮根もスタジオのスタッフもなごやかそうに笑うだけ。
しかし、こうした太鼓持ちぶりも考えてみれば当然なのかもしれない。実は、番組終盤に、青山和弘の口から読売グループの本音がぽろりと漏れた。
宮根から「これからわれわれは国会審議をどうやって見ていったらいいでしょうか」と締めの一言をふられた青山はこう答えたのである。
「たとえばこのあとこの法案が廃案にされては困りますので、うまくこう、巻き込んでいく。その努力の姿を見ていく必要がありますよね」
ようするに、最初から『ミヤネ屋』は、“国民からなかなか理解が得られない安保法制を懸命に説明する安倍首相をポジティブに演出しよう”“安保法案を無事に成立させよう”という思惑だったのだろう。
はたして、“公正中立”であるべきテレビ局がこんな番組を放映していいのだろうか。
安倍政権はことあるごとにテレビ局に対して放送法をチラつかせて圧力をかけているが、本当に放送法に違反しているのは、今回の『ミヤネ屋』のような政権礼賛番組だろう。国民はこの番組をBPOの審査対象にすべく運動を展開すべきではないだろうか。
(小杉みすず)
最終更新:2015.09.06 10:59