野宿とまでは行かなくても、家のなくなってしまった芸人は意外に多い。『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)内の人気コーナー「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」でチャンピオンにも輝いた、元自衛官と元体操選手による異色のコンビ、弾丸ジャッキーの元自衛官の方、オラキヨの話はとんでもない。
「僕は物欲も強いしパチンコもするし、その日のことしか考えない。金が入ればみんなにおごっちゃうから、いつも金がなかった。ある日、居候させてもらってた彼女から「出て行け」と言われ、急にホームレスになり、うちの事務所が持ってる渋谷の小劇場に「掃除するならいいよ」って条件で1ヵ月半住まわせてもらった。舞台袖のカーテンを毛布にして客席のベンチシートで寝てました」
「その時期、僕は300万円の借金で自己破産してます。実は上の兄貴は雀荘やったら従業員に持ち逃げされて破産し、真ん中の兄貴は婚約した女の1000万円の借金の保証人になったけど払えず自己破産。2人とも破産していて、僕は上の兄貴に相談して債務整理しました。破産3兄弟です」
オラキヨの話にも少し出てくるが、芸人の世界では、「先輩が後輩におごる」というのは暗黙のルール。たとえ金がなくても、だ。又吉直樹『火花』のなかで、主人公・徳永の先輩芸人である神谷が消費者金融で金を借りてでも、後輩にご飯や酒をおごっているシーンは印象深い。
『キングオブコント2012』(TBS系)で優勝し一気にブレイクした、バイきんぐの西村瑞樹は、成功したのにも関わらず、芸人世界の鉄のルールのせいでお金がないという。
「今、事務所(SMA)には芸人が140組もいて、そのうち40人くらいに定期的におごってます! 4人ずつ週に2回は焼き肉とか連れてくので月に40万以上使いますね」
「そんな浪費ばかりで、今は毎月入ったギャラを使い切る状態なので、ブッチャケ貯金ゼロです。だから仕事がなくなるのがすごく怖い」
彼らの語る貧乏エピソードが人々に好まれるのは、それでも夢のために生きていく芸人たちの力強さだったり、それを支える周囲の人間の人情を感じるからだろう。