「宝島」(宝島社)12年5月号で、AV女優専門プロダクション「株式会社ハスラー」代表取締役のMyu氏は、以下のように凄惨な現状を憂う。
「ギャラに関して言えば、特定のメーカーと一定期間出演契約を結ぶ単体女優の場合、昔は1000万なんて契約もあったけど、今はないでしょうね。ウチの話じゃないですが、女優によっては単体でも月30万なんて子もいるようです。(中略)正直AVのギャラだけで食べていけている子のほうが少ない。名前も出ないレベルになれば1日拘束されて事務所に1本5万とか。それですら仕事があればいいほう。そんな時代です」
AVだけで食べていけないなら、当然副業に励まなくてはならないが、彼女らの主な副業先は、AV女優が所属していることを謳う風俗店やキャバクラだという。親族や友人への顔バレの危険性を背負っても、もはやAVで得られるギャラだけでは生活できず、AVを副業のための宣伝ツールにせざるを得ないという現状がそこにはある。
なぜ、このようなことになってしまったのか? その最も大きな要因として、巷間言われている通り、インターネットの違法動画サイトに作品が無断でアップされてしまう現状があるだろう。
ただ、業界も手をこまねいて見ているだけではない。13年には、SODクリエイト、桃太郎、プレステージなど有名AVメーカー7社が、著作権を所有するAVを無断で公開したとして、FC2に対して6500万円の損害賠償を求める訴えを起こしている。
ただ、現在のインターネットの状況をご覧いただければ分かる通り、残念ながら、そのような行動も決定的な抑止効果を生むことはできていない。
現在は、“若者の草食化”“秋葉原カルチャーの隆盛”などの要因が絡まって、そもそも若者はAVを見なくなっている。AVの購入者の年齢層は10年前より10歳上がったと言われており(近年の“熟女モノ”ブームはその影響でもある)、今後、現在のAV主流購買層である中高年がアダルトビデオに親しまなくなったとき、それでもまだAV業界が存続できているかどうかは微妙だ。
悲しいことではあるが、かつて、ひとつの“サブカルチャー”として大きなうねりをつくった“アダルトビデオ”も、時代の流れのなかで、いま、その役目を終えようとしているのかもしれない。
(田中 教)
最終更新:2018.10.18 03:47