各種報道を見ていくと、1992年にはわずか年間4000タイトルだったのが、2008年には少なくとも月1000本以上、そして、今では月間2000~2500本以上のタイトルが発売されているという。各メーカーが制作費の安い作品を次々と出し、1本当たれば儲けものという考えで企画モノを濫造しているのだ。
なぜ、このようなタイトル数の激増が始まったのか? それは1本あたりのAVの売り上げが落ちているからだ。
「週刊ポスト」(小学館)12年4月20日号の記事ではAV監督の松本和彦氏が「ひと昔前は黙っていても1タイトルで2万~3万本は売れた。今は10分の1で、2000~3000本です」と語っている。
ただ、松本氏が出した「2000~3000本」というのは業界ではもはや“ヒット”のライン。“1000本行けばまだマシ”“500本売れれば採算が取れる”、といった予算感覚でつくるのがいまや普通なのだという。
しかし、この数字ですら、現在のAV業界では超えるのは楽ではない。そのため使われているのが、撮影会や握手会などの接触商法。AKB48グループなどでおなじみのあの手法がAVでもとられているのだ。「アサヒ芸能」(徳間書店)15年5月14日号では、AV女優の北条麻妃も「今や毎週、秋葉原でイベントもやってるし、ファンからしても「会いにいけるAVアイドル」なんです」と現状を語っている。
ここまでかなり厳しい状況を並べてきたが、1本1本の作品が売れていないのに、発売するタイトル数が増えているということは、当然、“制作費の減少”も起きている。
前出の「週刊ポスト」では松本和彦氏が「15年前には1本撮るのに1000万円の制作費をかけたこともあった。今はその10分の1がせいぜい。なかには10万円で作っているものもある。それは女優や男優のギャラだけじゃない、DVDのプレス代やモザイク処理、パッケージデザインも含めての金額だからね」と嘆く。
制作費が少なくなれば、当然、出演者へのギャラも減る。アダルトビデオの主役である、AV女優へのギャラも激動した。80年代後半に活躍したAV女優・小林ひとみのギャラは1本1000万円という噂もあったほどのAV業界だが、現在ではどうなのか……?