『絶歌 神戸連続児童殺傷事件』(太田出版)
いまなお余波が続いている神戸連続児童殺傷事件の加害者・元少年A の手記『絶歌』(太田出版)の出版問題。この手記が、じつは太田出版ではなく、幻冬舎から刊行されるはずだったことは本サイトでもすでに報じた。また、幻冬舎が出版を断念した背景には、手記の仕掛人である見城徹・幻冬舎社長が安倍首相や官邸との関係を深め、フィクサー化していった問題があるではないかという分析も指摘した。見城氏が世間の顰蹙を買う本を出版することで、自分が築き上げた立場が揺らぐことを恐れ、太田出版に押し付けたのではないか、と。
しかし、ここにきて、幻冬舎が『絶歌』出版を断念した理由がもうひとつあったとの情報が流れてきた。それが人気作家・東野圭吾氏の存在だ。東野氏は加賀恭一郎シリーズやガリレオシリーズ、『白夜行』など数多くのヒット作を連発し続けている売れっ子作家で、作品の多くが映像化もされている。そんな東野氏と元少年Aの手記に一体どんな関係があるのか。
じつは今年初めの段階で、幻冬舎が元少年Aの手記を出す計画をもっていることを、「週刊新潮」(新潮社)がすっぱ抜いているが、これを東野氏が読んで反応したのだという。
「『新潮』が出た後に東野さんから幻冬舎の担当に連絡が入り、『そんなものを出したら今後、幻冬舎との付き合いを考える』と言われたらしいんです。しかも、自身の版権引き上げについてもほのめかしたようで、その事実は幻冬舎の幹部にも報告されたようです」(大手文芸編集者)
東野氏は幻冬舎から2010年に『プラチナデータ』を刊行している。これは瞬く間にミリオンセラーという大ヒットになり、13年には二宮和也主演で映画化もされた大ヒット作だ。幻冬舎にとって東野氏はドル箱作家であり、幹部たちは真っ青になったという。
「東野さんは、神戸に近い大阪出身ですし、神戸連続児童殺傷事件にも大きな関心を寄せていました。それは『手紙』(毎日新聞社)や『さまよう刃』(朝日新聞出版)などの作品にも投影され、少年法は誰のためにあるのかといった問題提起を続けてきた。そのため、元少年Aによる手記を出すことを許せなかったんでしょう」(前同)