「マスコミを懲らしめる」「悪影響を与える番組はスポンサーに訴えかけよう」……。政権への批判的な報道は徹底的に潰すべきだというこれらの言葉には、自分たちの思惑を隠そうとする気配さえない。彼らは権力の監視こそがメディアの役割であるという当然の前提さえも知らないようだ。このメンタリティはネトウヨのよう、いや、ネトウヨそのものではないか。
しかも、「首相の再選を拒む“邪魔者”の排除が懇話会の役割。いわば首相の応援団」(産経新聞より若手議員の談)「安倍政権と考え方が近い文化人を通し、発信力の強化を目指そう」(朝日新聞)というこの懇話会がゲストとして招致したのは、なんとあの百田尚樹氏だった。トンデモな政治的発言を繰り返してきただけでなく、『殉愛』騒動も巻き起こし、いまでは保守からも鼻つまみ者になっているのに、よりにもよっていま、この人選。そして、「沖縄の2紙はつぶさないといけない」「沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」などと、いつものネトウヨ脳を開陳したのである。
他方、同日には自民党のハト派と無派閥の議員からなる「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」が勉強会を開く予定だったものの、こちらは中止されていたことがあきらかに。その理由は〈党幹部の一人が「分厚い保守政治の会」のメンバーに対し、「安全保障関連法案への審議に影響がある」として法案成立まで会合を開かないよう求めた〉(朝日新聞)というが、これは自民党内においても“安倍シンパ以外は認めない”という空気が流れていることの証明だ。
実際、この勉強会で講演を要請されていた小林よしのり氏はブログで、今回の問題についてこのように言及している。
〈小選挙区制になって、首相とは違う考えの議員は 抵抗勢力と見られ、パージされてしまう恐れがある。自民党内にはもう多様な意見は許されない全体主義の空気が蔓延しているのだ。安倍派でなければ議員でなし、という同調圧力が強まっているのだろう〉
たしかに、自民党は結党以来、「憲法の自主的改正」を使命に掲げてきた保守政党だ。それでも党内で影響力をもった派閥は、それなりに現実路線を取ってきた。だが、安倍晋三氏が政権トップとなってからは、改憲をはじめ、軍備の強化、自主独立などを露骨に押し出しはじめた。また、日本会議がさらに浸食し、「伝統」や「愛国心教育」などといった国家主義思想は強まる一方だ。