『日本人のための憲法改正Q&A──疑問と不安と誤解に答える決定版』(産経新聞出版)
「安保法制は違憲」という指摘が憲法学者から次々とつきつけられるなか、今度は、安倍政権が進めるこれらの法律を合憲とする2人の学者が記者会見を開いた。
「集団的自衛権合憲説を唱える憲法学者はたくさんいる」と言っていた菅義偉官房長官がなんとかしぼりだして名前をあげた3人のうちの2人、西修駒澤大学名誉教授と百地章日本大学教授だ。
もっとも、その内容は、「明白に憲法の許容範囲だ」「国際法上の固有の権利だ」と言うだけで、ほとんど具体性はなかった。
数日前に会見した国会招致された2人の憲法学者、小林節慶應義塾大学名誉教授、長谷部恭男早稲田大学教授は保守的な立場で集団的自衛権を違憲としているだけあって、緻密で怜悧な解釈論を展開していたが、西、百地の両氏はとにかく合憲と言わねばならないというイデオロギー臭丸出し。しかも、百地氏は「政府の説明が細かすぎてよく分からない」などと法律の専門家とは思えない台詞を口にし、西氏にいたっては、安倍首相が答弁で違憲だと明言した徴兵制についても「憲法が禁じている『意に反する苦役』には当たらない」と合憲を主張する始末だった。
だが、それも当然だろう。彼らは2人とも櫻井よしこ氏が会長をつとめる民間憲法臨調のメンバーなのだ。西氏は副会長、百地氏は事務局長をつとめているが、この組織は日本会議や神社本庁から全面支援を受けているウルトラタカ派憲法改正団体で、その目的は9条の改正どころではない。もっと根本的な体制の変革を迫っている。
民間憲法臨調がどんな考え方の団体であるかがよくわかるのが、その櫻井よしこ氏と民間憲法臨調が出版した『疑問と不安と誤解に答える決定版 日本人のための憲法改正Q&A』(産経新聞出版)だ。
櫻井氏らは、本書を〈改憲がやはり怖いのではないかと漠然と感じている人〉の不安や懸念を払拭するために出版した、というが、むしろ読めば読むほど、不安というか恐怖が増していく。その最たるものが、この問答だ。
〈Q49 国民は、憲法を国家権力に守らせる側で、守る側ではないというのが立憲主義ではないのですか? 憲法は国家権力を縛るものでは?〉
〈A 憲法は社会の基本的秩序を定めたものですから、われわれ国民も、憲法をしっかり守る必要があります。〉