そして、若い女性たちのあいだでは保守反動が起こり、専業主婦は高嶺の花、育児に時間とお金をかけることが一種のステータスとなっている。キャラ弁ブームを支えているのも、こうした“子どもに時間をかけなくてはいけない”という母親の信じ込みによる部分も大きいはずである。
そんななかで、今回の内閣官房のキャラ弁騒動によって露呈したのは、弁当づくりは母親の愛情の深さを指し示すバロメーターだという、社会からの強迫だ。専業主婦であろうとワーキングマザーであろうと、弁当は女がつくるものであり、しかもそれは凝ったものであることが好ましい──。もし、いまカツ代さんが生きていたなら、きっと嘆いたのではないだろうか。35年も経って、まだ何も変わらないの?と。
内閣官房がもし本気で「女性を応援」する気ならば、なおかつキャラ弁を推奨しているヒマがあるのなら、まずはカツ代さんが『働く女性のキッチンライフ』(大和書房)に綴ったこの言葉を心によく刻み込んでほしいと思う。
〈日々の暮らしの中から得たささやかな私の提案が、現在働いている女性、これから働こうとしている女性の参考に少しでもなれば、こんなに嬉しいか知れません。
そして、働く既婚女性が増えると共に、妻のみの家事分担率が少しでも減っていくといいのですけれど。
そう願っています〉
(田岡 尼)
最終更新:2018.10.18 03:12