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ビリギャルに実は“ビリ”じゃなかった疑惑が…正体は名門私立中高一貫校のお嬢様!?

 愛知淑徳の中学の偏差値は60前後もあり、著者のいう「小学4年の学力」では受からないだろう。たとえ愛知淑徳でなかったとしても、そもそも中学受験は一般的に小学校の勉強だけで受かるものではない。いくらなんでも小学4年レベルの学力というのは、あり得ないのではないか。

 さらにタイトルにある「1年で偏差値を40上げて」の「1年で」というのも誇大表現気味だ。著者はビリギャルことさやかがはじめて塾にやってきたときのことを、こう書いている。

「そんな高校2年の夏、ああちゃん(=さやかの母親のこと)に『さやかちゃんも、そろそろ大学のことを考えたほうがいいんじゃない?』と言われて、僕の塾へ連れて来られたのでした」
「こうしてさやかちゃんは、週に3回、僕が勤めていた塾の夏期講習に通って来るようになります」
「高校2年の夏期講習が終わり、それまで週3回来ていたさやかちゃんは、週4回、塾に通って来るようになります」

 そう。ビリギャルは高校2年の夏には週3回塾に通い、受験勉強を始めているのである。しかも高2の2学期からは週4回も塾に通っている。「1年で」ではなく「1年半で」だし、高2の夏から受験勉強ってふつうの高校生よりむしろ早いくらいではないか。

 本当に偏差値30の高校3年生がこの本を読んでも「わたしにも、できる!」とは、到底思えないだろう。

 映画でビリギャルの母親を演じた吉田羊が「奇跡のようなお話ではあるけど、その奇跡にはちゃんと理由がある。その理由を劇場で確認してほしいですね」と語っているが、まさに奇跡には理由があったのだ。

 理由のひとつは、これまで指摘してきたように、ビリギャルは中高一貫の進学校に通っていて、そもそも小4レベルの学力などではなかったこと。しかし理由はほかにもある。もうひとつは、慶應大学に狙いを定めたことだ。実は、彼女が合格した慶應大学SFCの総合政策学部の受験科目は、英語(あるいは数学)と小論文の2科目。また、受験には落ちたが本命だった文学部も、英語(外国語)と小論文と日本史(あるいは世界史)で、歴史科目の配点の比重は少ない。つまり、ほぼ英語と小論文しか必要のない学部なのだ。

 しかも小論文は、最初から得意だったらしい。

「実は小論文に関しては、さやかちゃんはなぜか最初からセンスがありました。お話の中に入り込んで、怒ったり、感動したりするセンスがあったからです。そしてなぜか(?)字がきれいなのも好印象でした」

 最初からセンスがあった。つまり、ビリギャルには小論文に必要な読解力や論理的思考力、文章力がもともと備わっていたということなのだろう。

 となると、英語にしぼって勉強すればよかったのだ。

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