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中川政務官以外にも路チュー目撃多数! 国会議員同士のキモすぎる恋愛事件簿

《どうして私が山下さんと一緒に出かけるようになったか、その点はどうも月と尾花で、無粋には割り切れない。兎も角、議長室の前を通って、広い廊下をアベックして、階段のところまで行き、そこから引返したには相違ない。山下さんは戻ってから別席で誰かと話しているようであった。私は間もなく立って、[引用者注――大臣室の]大臣席へ帰った》(泉山間窓[三六]『トラ大臣になるまで 余が半生の想ひ出』新紀元社/原文の旧漢字、促音の「つ」表記は改めた)

 引用文中に出てくる「月と尾花」とは、「月は尾花と寝たと言う、尾花は月と寝ぬと言う」という小唄の一節からとったものらしいが(尾花とはススキのこと)、それほど両者の事後の言い分は異なった。というか、泉山が「大臣室へ帰ってから、私には朦朧として記憶がない」と書いていることから察するに、彼はこのとき自分が何をしたのかほとんど覚えていないと言ったほうが正しい。

 翌日の泉山に対する衆院の懲罰委員会での山下の発言に従えば、このとき両者のあいだでは以下のようなできごとがあったという。宴会で酔いの回った泉山は、初めは食堂で働く女性にちょっかいをかけていたが、やがて山下に対し「こんなところはつまらないから、ほかに行こう」などと言って、力づくで食堂の外に連れ出す。そこで山下は泉山から抱きつかれたうえキスを迫られ、首を振って必死に抵抗するうち左あごを噛みつかれた。たまらず彼女は泉山を殴りつけると、相手の手がゆるんだ瞬間に逃げ出したという。

 このあとも泉山は、廊下ですれ違った別の女性議員の手をしばらく握ったまま離さなかったりと狼藉を働いたらしい。先述のとおり泉山はいったん大臣室に戻り、広川弘禅らに無理矢理に起こされたが、すっかり酔いつぶれて目を覚まさなかったという。午後9時前には本会議が再開され、泉山は農林大臣の周東英雄に抱きかかえられながら廊下に出た。それでも意識は朦朧としたまま、議場脇の廊下のソファで眠り込んでしまう。

 本会議では、出席しているべき蔵相がいないことに野党議員らが気づき騒ぎ始める。なかなか騒ぎが収まらないので2度ほど休憩がとられたのち、あらためて会議が再開された。このとき、社会党の女性議員と被害を受けた山下があいついで登壇して泉山の所業を告発、閉会の前には翌14日に泉山に対し懲罰委員会を行なうことが議決される。

 この間、泉山は一向に酔いの覚める気配がないので、やむをえない要件でGHQに行くと称して国会の外に連れ出された。車で皇居の濠端を3周し、さらに官邸、自宅と転々としたが、泉山があまりに怒るので、やむなく国会に引き返したという。国会に戻るとすぐ医務室に担ぎ込まれ、注射をして寝かしつけられる。それでも気が咎めたのか、こうしてはいられないと怒鳴って大臣室に帰ったらしい。泉山が正気に戻ったのはその日深夜のことで、ついに本会議に出ることはなかった。

 泉山は翌日の懲罰委員会にも出席せず、結局蔵相、議員ともに辞任している。本来なら首相である吉田の任命責任が問われてもおかしくないところだが、そうした声はほとんど上がらなかったようだ。泉山の騒動の10日後に吉田は衆院を解散、翌49年1月に行なわれた総選挙で民自党は単独で衆院の議席の絶対多数を獲得し、以後、吉田政権は5年以上続くことになる。

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