サイエントロジーの教会の公式ウェブサイトより
サイエントロジーとは、SF作家L・ロン・ハバードが創始した宗教団体だ。その発端は彼が1950年に発表した『ダイアネティックス』なる一種の心理療法とその書籍。近代精神医学によらず心を解放させようという、宗教よりも自己啓発に近いものだった。しかしハバードとダイアネティクス実践者はすぐに宗教団体としての「サイエントロジー教会」を設立。その他多くの自己啓発・スピリチュアリティ活動と異なり、強固に先鋭化した組織を形成していったのである。
勧誘に熱心なことでも知られ、特にセレブリティの入会には力を入れている。その中で最も有名なのはトム・クルーズだろう。彼自身もしばしばサイエントロジーの宣伝に携わっている。他にも初期から入会していたジョン・トラボルタ、カースティ・アレイ、エリカ・クリステンセンなどなど……信仰を公言しているハリウッド・スターは数多い。
欧米を中心に、サイエントロジー教会はまたたくうちに勢力を拡大していった。熱心な勧誘も要因の一つだろうが、従来の宗教団体からみて特殊なポジションにあることも大きく関わっているだろう。彼らの主張では、人間には肉体と心の他、セイタンという要素があり、それをEメーターなる機械によって測る(オーディティング)ことが出来る。日々の修行によってセイタンのレベルを上げ、精神を解放していくのが重要であると説く。修行の度合いによって教会でのOT(オペレーティング・セイタン)という階層が上がっていき、上位のものだけに明かされる秘儀もある。
教祖が元SF作家ならではの一見「科学的」な装い、精神を解放し本当の自分を発見するという「自己啓発」、近代精神医学を否定したオルタナティブとしての「精神探求」、その根拠として説明されるセイタンなどの「スピリチュアリティ」など、まさに現代人にウケる要素が揃っている。普通こういった活動団体は、かなり外に開かれた「ユルい」ものが多い。しかしサイエントロジーの場合、堅固な組織づくりと密教めいた秘密主義といった「ラディカルな宗教性」も同時に併せ持っているのが特徴的だ。
このような仕組みが、伝統宗教の力が弱まった欧米社会において、多くの人々の心を捉えたのだろうが……。それが同時に、欧米では「カルト」として批判されることの多い理由であるかもしれない。