技術もさることながら、毎回違うネタを考えなければいけないということも、嫌がらせ弁当最大の難点だろう。
だが、母親はそんなところではつまずかない。なぜなら、弁当の最大の目的は技術を披露したり嫌がらせすることではなく、娘とコミュニケーションを取ることにあるから。伝えたいネタは尽きないのだ。
1年目は「あくまで娘に対する一方的な嫌がらせが目的」だったが、「日々お弁当を作り続けるうちに楽しくなって」きたといい、娘は「ウザイウザイと呟きながら」登校していた。
そして2年目になると「よりメッセージ色が濃くなっていった気がします。『何かを伝えたい』という思いが増えていった」という。娘も「ごくまれに、私がお弁当に込めたメッセージになんとなく応えてくれたことも」あったそうだ。
3年目はさらに、「お弁当に込める思いが、より強くなってきた」という。それはわかりやすいメッセージのほか、「形にはあらわれない、内側に込めた思い」と振り返る。
そんな母の思いまみれのお弁当を「残さず食べてくれた」娘もまた、毎日蓋を開ける瞬間を心待ちにしていたに違いない。今日はどんな嫌がらせなんだろう、と目をキラキラさせながら。
(羽屋川ふみ)
最終更新:2017.12.13 09:38