そして今回、同書は、桃山学院への1億円の寄付についても、さくら夫人が温井校長と面談し、寄付の放棄を求めていたという関係者の証言を掲載。さらに、その面談後、さくら夫人は再び温井校長のもとを訪ね、「家鋪が生前に書いたものです」と言って件のメモを見せたのだという。その内容は以下のようなものだ。
〈知っての通り、娘たちが欲出して、さくらにありもないことを言うてくる。桃山に寄付受口になってもらい(弁護士もちょっと頼りないねん)、さくらの生活にかかってきそうなら、戻してやってほしい〉〈弁護士は決まり事しか言わんから 気持ちでやってくれ、約束は、さくらにさせる〉(メモより抜粋)
同書の取材班はこのメモのコピーを独自のルートで入手。このメモに書かれた文字と、親族から提供を受けた信用保証委託契約などにサインされたたかじんの直筆サインや、ファンクラブ会報誌に寄せた直筆の挨拶文という〈間違いなくたかじん本人が書いたものという裏付けが取れている〉真筆を筆跡鑑定にかけている。しかも、鑑定を行ったのは「東京筆跡印鑑鑑定所」の代表・かわのかずよし氏で、全国の裁判所からも選任依頼を受けているという高い信頼性を誇る筆跡鑑定士だ。
そのかわの氏の鑑定の結果、文字のハネやトメの違い、バランス、「自」という字の「2画の書き順が違っている」点や、数字の「0」の「書き順が逆」などという細かな違いを指摘した上で、温井メモの字はたかじんの書いた文字ではないと断言。“たかじんの文字を見たことがある、あるいはよく知っていて、そのマネをして書いたのではないか”とも推測している。
こうした同書が明かした事実関係について、取材班は百田尚樹氏とさくら夫人には配達証明郵便で取材の申し込みを行ったが、両名の弁護士は編集部に「警告書」を送付。警告書には〈記事を掲載、配信等することがないよう〉と書かれていたという。だが、同書の取材班は訴えられることも覚悟で、今回の出版に踏み切ったようだ。
奇しくも、同書の発売日は百田氏の誕生日でもある。この大きな“プレゼント”に対し、百田氏はTwitterでこう反論している。
〈Amazonには「これがほんまのノンフィクションやで」と派手に謳っているが、私の本を「当事者に取材せずに書いた」と非難した人たちが、同じように当事者に取材しないで、事実の検証もしないで書いている。「お前がやったようにしてやったんだ」と言うつもりかな。当事者でもないのに。〉
同書の取材班が取材を申し込んでも百田氏が受けなかっただけの話だと思うが、こういう論理がまだ反論として通用するとでも考えているのだろうか。ともかく、このぶつけられた新事実に、百田氏とさくら夫人はどう出るのか。今後の行方に注目だ。
(田部祥太)
【リテラが追う!百田尚樹『殉愛』騒動シリーズはこちらから→(リンク)】
最終更新:2017.12.13 09:34