「合否は1週間ほどでご連絡します。オーディションに合格したあとには、仕事を補完する上でレッスンを受けてもらう場合があります」
とあり、その金額は30万円。「面接に合格させて、喜ぶ応募者に『あなたの才能を伸ばすためには芸能レッスンが必要』と言って、その費用を請求する。面接会場に芸能関係未経験者が多かったのも、これなら頷ける」と著者は未経験者をカモにした悪徳ビジネスであることを確信した。また、求人情報誌ではなく求人サイトに応募情報を掲載していることについてもこう分析する。
「今回の芸能事務所の事例は、求人サイトの情報を通じて自ら応募しているので、当然ながら特定商取引法は及ばない。そのため、応募者らがレッスン契約を結んだとしても、中途解約やクーリングオフの適用はない。業者らはこの点を熟知しているので、求人情報を利用していると思われる。もしレッスン契約を破棄しようとすれば、契約書の不備を突くことしかないだろう。
この手のあやしげな求人情報は、求人サイトに多くあるが、求人誌にはあまり載っていない。おそらく、紙をベースにすると、後々まで証拠として求人内容が残るからだろう」
ネットは求人内容がある一定の期間を過ぎると消去されたうえで更新される。また、クーリングオフが適用される“勧誘による契約”でもない。泣き寝入りしている芸能界希望の若者は多くいるのではないだろうか。
非正規雇用者はその生活の不安定さから、時にはその日に給与が支払ってもらえる日払い制のアルバイトであったり、とりあえず採用されやすいものを選んだりすることもあるだろう。しかし、安易に飛びつくと大きな落とし穴が待っていることも、よく覚えておきたい。
(寺西京子)
最終更新:2017.12.13 09:13