●『手押しポンプ探訪録』(大島忠剛/信山社)
世の中には変わった趣味の持ち主が多くいるが、もしかしたら同じ趣味の持ち主は世の中で一人しかいないのではないかと思われるのが、本書の著者だ。手押しポンプという今はほとんど見る事のなくなった、水をくみ上げる井戸の様なものの熱狂的な愛好家。手押しポンプと関係のあるものなら何でも集めており、それをまとめたのが本書。15万円もする実物のポンプ、海外製のポンプ、ポンプを模った模型や、手押しポンプが描かれたブリキ、ライター、ウェルカムボード、扇子、ブローチ、ネックレス、ハンコ、焼きもの、グラス、ネクタイ、エッグアートなどが収録されている。挙げ句の果てには手押しポンプが出てくるCMや映画のキャプチャー画像まで集めているのだ。本業は土木工学の専門家で、この本以前にも『トーキング
オブ ザ公衆トイレ』という笑いが込み上げてくる書名の本を出している。
●『RAINBOW IN YOUR HAND』(カワムラ・マサシ/ユトレヒト)
紙をパラパラめくるとアニメーションの様に絵が動き出すパラパラブックスが人気だが、この本はなんと「虹」が浮かび上がるという驚きのアイデア仕掛け。色見本帳の様な黒い紙の上に、七色の四角が描かれており、パラパラめくろと、アーチ状の虹が立体的に浮かび上がってくるのである。非常に斬新な発想だ。YouTubeなどでその動画が見られるので気になる人は検索して見てみよう。価格も1000円で、サイズもコンパクトなので面白プレゼントとしては良いかもしれない。しかし筆者も現物を買ってみたのだが、実際にインターネットの動画などで見るほど、鮮やかな虹が浮かび上がらなかったのも事実である。
●『ヤ・キ・ソ・バ・イ・ブ・ル──面白くて役に立つまちづくりの聖書』(渡辺英彦/静岡新聞社)
最後にサービスとして『ベスト珍書』では未掲載の脱力系珍書を一冊紹介しよう。ゆるふわ系珍書というよりは、親父ギャグ珍書と言えよう。その名も『ヤ・キ・ソ・バ・イ・ブ・ル―面白くて役に立つまちづくりの聖書』。著者はミッション系学校を卒業した富士宮やきそば学会の会長。町興しの為に富士宮市の名物であるヤキソバを、駄洒落を駆使してPRしていった経緯が詳しく記されている。本文自体が駄洒落だらけで非常に読みにくく、第一部は『「旧焼聖書」=THE OLD TESTA麺T』と言った具合である。他にも「出フジノミヤ記=YAXOBUS」や「ホスピタリ茶(ティー)」「MISSION 麺 POSSIBLE」、横手焼きそばや太田市との「三国同麺」、焼きうどん発祥の地である小倉との「天下分け麺の戦い」、焼き鯖で知られる小浜市との「ヤキソバVSヤキサバ」「学麺のすすめ」「To B(B級グルメ) or not to B, that is the 食え―stion! by食む―let」といった調子で、読んでいて疲れを感じさせるほど駄洒落のオンパレードである。