『ベスト珍書 このヘンな本がすごい』(中公新書ラクレ)
前回、リテラに寄稿した「こじき百科、職質集、性器図鑑…『ベスト珍書』著者が選ぶ本当にヤバい本5冊」(リンク)では、筆者が執筆した『ベスト珍書』( 中公新書ラクレ)の中でも取り分けセンセーショナルな強烈本を紹介した。実際、『ベスト珍書』のオビにも「エログロ、発禁本」と記されているので、良識のある方々には敬遠すべき本だと思われても仕方がないかもしれない。また読書レビューサイトでも、こうしたグロテスク本のインパクトがあまりにも強烈だった為か、その部分だけを取り上げて、悪趣味で不謹慎だというコメントが多数散見される状態だ。
しかし、本書で取り上げているのは何も全てが眉をひそめてしまう様なグロテスクな本ばかりではない。マヌケな物を集めたコレクション本や、プレゼントとしてあげても良い様なかわいらしい本、思わずクスっと笑ってしまう様な面白コンセプト本も複数紹介している。こうした老若男女に抵抗なくお勧めできる本を集めた『ゆるふわ系珍書』として、別の本にすれば良かったかもしれないぐらいである。
従って、今回の記事では前回の世間の良識を逆なでする様な過激本とは対照的な、万人受けする人畜無害なゆるふわ珍書を紹介しよう。
●『ゆかいな幼稚園バス大集合』(成美堂出版編集部/のりもの写真えほん12)
本来は幼児向けのえほんシリーズの一冊なのだが、結果的に痛車マニア垂涎物の本となってしまっている。日本各地のキャラクターが模られた改造型幼稚園バスを収録したもの。中には機関車トーマスやピカチュウ、ミッフィー、ハローキティなどの形をした幼稚園バスが載っている。しかも痛車の様に単に絵が描かれただけでなく、そうしたキャラクターの姿を模した形になっているのだ。特に解説には記されていないのだが、版権元に快諾を取ったのかどうかが気になるところである。キャラクターもの以外にも、ロンドンバス型、新幹線型、汽車型、動物型の幼稚園バスが多数紹介されている。幼稚園児達にとってはたまらない程ファンタジックな見た目だが、痛車オタクからも注目を浴びたのか、一時、オンライン書店では軒並み高額で販売されており、現在では入手不可能の状態が続いている。
●『スクリーンを横切った猫たち』(千葉豹一郎/ワイズ出版)
猫が登場する映画を紹介した本。世の中には映画好きを自任する人が多数いて、編集者である筆者にも映画評論の企画が持ち込まれる事がよくある。しかしよっぽどオリジナリティのある切り口でないと、他人の映画評論は読みたいとは思えないものだ。しかしこの本は「映画」と「猫」を組み合わせた時点で、類例のないものとなっており、非常にユニークだ。猫が登場する映画を105本紹介したもので、その猫が映画でどういう役割を担ったのかや、猫の模様、役名、本名、そして猫トレーナーの名前まで記載している。有名なものでは『ティファニーで朝食を』や『老人と海』『ミート・ザ・ペアレンツ』などがある。世の中には猫好きは多いし、映画好きも多いが、その二つを組み合わせたところが画期的だ。ちなみに海外では、「犬が出てくる映画」を集めた本が出ている様だ。また日本でも嫌煙主義者によって、タバコが写るシーンがある映画を網羅したサイトがある。