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“愛妻家アピール”で事件を封印!? 猪瀬直樹の厚顔無恥ぶり

「僕は休日に、しばしばゆり子を連れてウインドウショッピングを楽しんだ。気に入るものがあれば、即座に買った。いつも試着室から現れるゆり子の姿を楽しみにしていた」(同)

 もちろん妻も夫を心から信用し、愛してもいた。

「(ゆり子の)厳しくかつ熱血の指導振りは鳴り響いており、保護者の授業参観は校内でいちばんの盛況だった。女子児童にとってはゆり子の個性的なボブヘアと都会的ファッションセンス、夫について話すときのはにかむような表情と仕草が強い関心をそそっていたようだ」(同)

 自分のことだけでなく身内の妻もまたテライのないほどに自慢して誇り、臆面もないのろけのオンパレード。猪瀬といえば、傲慢で傲り高ぶっているイメージが既に定着したが、それは本書でも遺憾なく発揮されている。妻への愛、そして自分もどれだけ妻から愛されていたのか。そうした夫婦の歴史を書き連ねていくのだ。

「『高校生のカップルのようで、つい声を掛けそびれたわ』ゆり子と僕が寄り添って並び坐って語り合っている後ろ姿を見て、妻の犬友達の女性が笑って喋ったという」(同)

 もちろん、発病した後に猪瀬が献身的に看病するさまも描かれる。昏睡状態になった妻に、彼女が好きだった歌「花嫁」のCDを聞かせ、都知事という激務の間に何度も病室を見舞い、妻に語りかける。

「昏睡状態に陥ったゆり子を目の前にして『申し訳ない』と思った。自分勝手でわがままなことは承知していたので、ごめん、ごめん、と僕はよく誤ってきた」「なぜもっと日常の暮らしのなかで優しい言葉をかけなかったのかと自責の念にかられた」(同)

 なんて感動的な夫婦の物語なのだろう。……ここまで読んで、そう感じた人も多いかも知れない。だが、本書には本来あったであろう“夫婦間の大きな問題”は、影も形もないのだ。

 というのも、猪瀬は西麻布に豪華で洒落た事務所を構え、休日以外はそこで仕事をしていた。暖炉もあるというその事務所で雇っていたのは、若くて美人の女性スタッフばかり。その女性たちの一部には愛人疑惑も取りざたされた。

 なかでも、「週刊文春」(文藝春秋)13年6月13日号に掲載された、20年ほど前に猪瀬の“愛人”だった作家・中平まみの告発は大きな話題に。そこには、飲酒運転やテレフォンセックスを強要しようとしたことをはじめ、ストーカーのような粘着さや自信家でナルシストであるという猪瀬の性格が、ことこまかに暴露されていた。

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